未払い残業代は歩合給で解決

経営人事コンサルタント業「ビジネスリンク」（豊橋市広小路２）の社長、西川幸孝さんが、新著「運送業の未払い残業代問題はオール歩合給で解決しなさい」を出版した。企業側弁護士として労務問題に詳しい向井蘭さん（第一東京弁護士会所属）との共著。
　西川さんは昨年１月に向井さんの誘いを受け、問題解決策を提言する本書のプロジェクトをスタートさせた。
　運送業界の賃金体系について、複雑な案件への豊富な対応経験があり、その成果を著書「同一労働同一賃金に対応！　トラック運送業賃金制度設計の実務」（２０２０年）にまとめた西川さん。またビジネスリンクが得意とする歩合給制は、ほとんど先行研究がなく、単著は１９６６年のものが最後だったという。西川さんが国会図書館に通うなどして資料を集め、２０１６年に「マネジメントに活かす歩合給制の実務」を出版、20年に改訂版を出している。
　運送業はドライバーが長時間労働に陥りやすく、未払い残業代が問題になりやすい。そんな中、２０２０年に最高裁で「国際自動車事件」の判決があった。歩合給の一部から、残業手当などに相当する金額を控除して支給する規則は無効とする判断。運送業界は、惰性で続けてきた賃金制度の改革を求められることになった。
　本書は、運送収入など個人の成果が把握しやすく、長時間労働でも割増賃金未払いが発生しにくいとして、「オール歩合給制」への移行が問題解決への手法と提案。その法的位置づけ、手法を詳述している。また、ジョブ型雇用など雇用形態が多様化する今、さまざまな賃金体系が必要とされている。西川さんは「歩合給は運送業以外でも応用が効く。本書で学んでもらえれば」と話す。
　日本法令刊。２７２㌻、２８６０円（税込み）。通販「アマゾン」では、「流通・物流」のカテゴリーで19日の出版以来、ベストセラー１位を続けている。【山田一晶】