進学や就職で出身地の豊橋市を離れた経験を持つ女性が、地元でのキャリア形成を語るトークイベントが24日、エムキャンパス(駅前大通2)であった。「内と外」を知る立場から、暮らしや働く環境などについて本音で語り、豊橋でどうキャリアプランを描けるかについて考えた。
種麹の製造販売などを手掛けるビオックの経営者、村井裕一郎社長が個人で企画した。トークテーマは「で、豊橋での大卒女性のキャリア形成どうすんの?」。転職やフリーランスで活動する際の経験談から、子育てや教育、地元企業の風土など肌で感じた豊橋の「良し悪し」を語った。
パネリストはいずれも市内出身で大学進学を機に豊橋を離れた30~40代の女性。
「恋愛、就活ライター」のトイアンナさん(35)は慶応大学卒業後、外資系企業のマーケティング職を経てフリーライター。今回は唯一の都内在住者として外から見た豊橋のよさを「財力で教育格差ができない点」とした。一方、転出者の多くが戻らない点に「一見して仕事がある気配がないところ」と指摘した。
弁護士の中川彩子さん(42)は早稲田大学卒業後、京都市での司法修習を経て2005年弁護士登録。09年に市内へ戻り、法律事務所を共同経営。千葉県出身の夫と3児の母として暮らす。
豊橋で暮らしは「住居費や新鮮な食材など家計に優しく子育てもしやすい」とした。求人が少ないなど、地方でのキャリア形成に関する不安などには「中小などは特に専門性よりオールランダーを求める企業が多い。専門人材を育てる土壌も必要だが、現状は外でしっかりと専門性を身につけて強みを生かすことが必要」と述べた。
マーケティングディレクターの中野直子さん(37)は大学卒業後、外資系企業のマーケティング職として海外駐在なども経験。17年に帰郷、市内で会社も営む。ふるさとに戻った理由に「夫の転勤先が偶然豊橋で、子育ても両親が近くにいるから」と説明した。
また、専門職として地元企業と接した経験を基に「なんでもこなす人が求められ、会社に使われる人が多い」との印象を述べた。トイさんも「昇進するほど忙しい風潮は見直し、スキル特化型人材を増やすべきだ」と中小企業なりの働き方改革の重要性にも触れた。
主催した村井さんは「若い女性が転出したまま帰ってこない。おもしろい豊橋を残したかったのが開催の動機。今後も続けたい」と話す。
【加藤広宣】