内視鏡による心臓手術で患者負担減

2023/02/09 00:00(公開)
後藤医長=豊橋ハートセンターで
東三河唯一の低侵襲認定施設「豊橋ハートセンター」

 医療法人澄心会「豊橋ハートセンター」(豊橋市大山町)は、循環器系疾患の専門病院だ。そして東三河では唯一の低侵襲(患者の体の負担が小さい)心臓手術の認定施設になっている。心臓血管外科の後藤芳宏医長(40)は、内視鏡を使った手術で、患者の生活の質を守ろうとしている。
 豊橋市出身で浜松医科大学卒。学生時代からハートセンターで働くことを考えていた。外科医を目指したのは5年生の時。静岡県や一宮市の病院で経験を積み、10年前にやってきた。
 従来の心臓手術は、胸の中央にある胸骨を縦に切断し、開胸器という万力のような器械で大きく広げ、心臓がよく見える状態にして執刀する。25~30㌢の傷跡が残るほか、術後の骨の固定や胸骨からの出血、感染などの問題がある。このため2カ月は車の運転も含め、重労働が禁止される。「高齢者の場合、そのまま起き上がれなくなってしまう人もいる」と後藤医長。
 内視鏡を使う手術は、体表に小さな穴を開けるだけで可能だが、消化器や泌尿器などの分野に限られていた。それが器具の発展で、心臓でも可能になった。全国で10前後の病院だけで、ハートセンターはその一つだ。
 適用されるのは、僧帽弁閉鎖不全症や心房中隔欠損症、一部の不整脈など。このうち僧帽弁の修復では、右側の肋骨(ろっこつ)の間に、直径3~4㌢の穴を開ける。隣には直径1㌢の3次元内視鏡カメラ用の穴、さらに隣に5㍉の穴を開け、器具を挿入する。心臓手術に欠かせない人工心肺関係の器械は、足の付け根の血管から挿入する。
 心臓近くに挿入されたカメラは、モニター上で画像を二重にして映し出す。専用眼鏡を通すと、立体的に見える。「手術の際は、奥行きがわかることが重要です」と後藤医長は言う。映像は明るく、レンズを被写体に近づけてもピンボケしない。これを見ながら組織を切ったり、血管を縛ったりする。
 手術は2~3時間。患者は、3日後には退院でき、禁止事項もない。傷跡も小さい。
 もともと、体に傷を残したくない女性に使っていた手術だが、最近は体力のない高齢者らに勧めている。患者の家族がインターネットで調べて「内視鏡手術を」とリクエストするケースも増えた。昨年は40例、今年は50例の手術を目指す。
 最近はロボットによる手術が普及し始めているが、心臓手術はまだ難しいという。人工心肺装置を使うため、時間との勝負になるが、ロボットは遅い。さらに内視鏡の方がコストが安い。
 後藤医長は「以前は『生きるか死ぬか』とリスクの高かった心臓手術が、内視鏡手術によって患者の負担を大きく減らせた。心臓病で悩む人にとっての福音になれば」と話している。
【山田一晶】
3Dカメラを持つ後藤医長。モニターは被写体が二重に映っているが、特殊な眼鏡を着けて見ると立体化する
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