豊川市萩町の飲食店「寺そば萩山慈恩寺」で、異色の2人がそば職人を目指して修業している。
元農協職員の松山伸介さん(57)=蒲郡市御幸町=と、陶器卸業の加藤弘和さん(52)=名古屋市昭和区。ともに50歳を過ぎてから、そばの道へ挑戦することを決断した。大将の深津弘さん(76)が熱心に指導する。
松山さんは大のそば好き。30年以上勤めたJAを思い切って早期退職した。深津さんからは「そばの道は富士山みたいなもの。遠くから見ている分なら美しいが、近づくと厳しい」と言われた。それでも、寺そばのつゆのおいしさにひかれ、「この味で自分の店が持ちたい」と決意し、門をたたいた。
6月に修業を始めたばかり。そば打ちからゆで方まで、丁寧に教わる。深津さんは「昔なら見て覚えろだったが、今は丁寧に一つひとつ教えています」と話す。
将来の夢は地元の蒲郡で店を持つこと。「寺そばのおいしい味を受け継ぎ、おなかいっぱいそばを食べてもらえる店にしたい」と夢を語る。
加藤さんは、10年以上前から深津さんとの付き合いがある。深津さんが立ち上げ、今は娘夫婦に店をまかせたそばの名店「玄子(くろこ)」の器を加藤さんから購入していたからだ。以前から「そば職人にならんか」と誘われていた。
新型コロナウイルス禍で器の売れ行きが低迷したこともあり、深津さんへ弟子入り。大学時代に長野県でおいしいそばを食べ衝撃を受けたことも、そば職人への道を後押しした。
加藤さんは父の跡を継ぎ瀬戸市で商売をしている。「瀬戸焼の織部などは、そばの器にぴったり」と話し、器を販売しながら、そばを食べられる店をオープンするのが目標だ。
深津さんは「2人とも筋が良い」と評価。「いいそば職人になれるよう、全力でサポートする」と話す。
【竹下貴信】