「ジャパン・トゥエンティワン」加藤執行役員ら報告
イスラエルのベンチャー「アステラ」社が開発した水道管の漏水検知システムを、大分県が6月、都道府県としては初めて導入した。販売代理を手掛ける「ジャパン・トゥエンティワン」(豊橋市多米東町2)の加藤正純執行役員と近藤李穂さんが東愛知新聞社で報告した。
アステラ社の「アステラ・リカバー」は、人工衛星から発するマイクロ波を地下3㍍まで浸透させ、水質により異なる反射特性から水道管の漏水状況を検知する。漏水は周囲の土砂を含んでいるため、水道水と区別できるのだ。池などの水は事前に除外できる。2016年に商用化、64カ国の780件以上のプロジェクトに採用された。国内で初採用した豊田市上下水道局は、5年かかるという現地調査を約7カ月に短縮した。
膨大な調査データを元に漏水情報や管ごとの固有の特徴を識別し、アルゴリズムやAI技術で漏水検知やリスク評価ができる。調査結果はアプリやデータ、報告書などにまとめて提供される。
今回の導入費用は約1億円。大分県内には18市町村があって上水道事業を担っている。公営水道の総延長は9000㌔。
公営水道の維持管理は各市町村の仕事で、従来は調査員が水道管の埋設場所を歩き、水漏れがないか音を聞き取っていた。1日の移動距離は5~10㌔が限界で、大分合同新聞によると、県全域を確認するのに5年ほどかかっていたという。
大分県がジャパン・トゥエンティワンと契約し、入手した調査データを市町村に提供する。これは半径100㍍の大まかなものだが、漏水の有無を最初から調べるのではなく、漏水区域を特定してから調査員が向かうので、コストが10分の1になる。現場の確認と、漏水箇所の修理は自治体が担当する。県が一括して発注することで、市町村ごとに依頼するより8500万円節約できたという。すでに7月から作業が始まっている。
大分県は、前知事の広瀬勝貞氏の主導で大分空港の「宇宙港」化などに取り組んでおり、宇宙開発に理解が深い。人工衛星を使ったアステラ・リカバーの最初の受け入れにつながったのでは、という見方もある。
水道管の老朽化は全国的な問題になりつつある。高度成長期に造られた施設の更新が滞っているほか、水道事業職員が削減される傾向にあるという。厚生労働省の資料によると、2015年現在の管路経年化率(老朽化率)は、47都道府県平均で13・6%。大阪府が28・3%と最も高く、神奈川県(21・7%)や山口県(20・5%)が続く。大分県は17・5%、愛知県は14・9%で全国平均を上回る。
加藤執行役員は「大分県をモデルに、全国に普及させたい」と意気込んでいる。
【山田一晶】
人工衛星から発射されたマイクロ波の反射波を分析するイメージ(ジャパン・トゥエンティワン提供)