【インタビュー】ご当地漫画「だも豊」著者の佐野妙さん 「郷土を知る副読本に」

2024/06/18 00:01(公開)
「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」 Ⓒ佐野妙/竹書房

 豊橋市出身で漫画家の佐野妙さんは、竹書房の月刊誌「まんがライフオリジナル」で豊橋を舞台にした4コマ漫画「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」(だも豊)を連載している。今では「ご当地漫画」としては異例のロングセラーとなっている。漫画家を目指そうと思ったきっかけ、作品に対する思い、「生粋の豊橋人」が考える豊橋の魅力など、そして、10年以上バディを組む竹書房編集者の帰山裕さんにも話を聞いた。

 -漫画家になろうと思ったきっかけは。
 佐野 幼少期から漫画家になりたいという思いはありました。高校時代は、自己流で漫画を描いていたこともありますね。でも、アシスタントになりたいと本気で頑張っている子が周りにいたので、私は趣味として続けようと思っていました。まさか仕事としてやるとは思わなかったです。


 -帰山さんとの出会いは。
 佐野 社会人になって自作のサイトで漫画を投稿するようになりました。その一つが、デビュー作となった「森田さんは無口」です。竹書房の月間賞に応募したところ、編集者として返事をくれたのが帰山さんでした。今では10年以上の付き合いになっています。


 -帰山さんは当時の佐野さんと会って思ったことは。
 帰山 絵はまだまだでしたが、物事の捉え方のセンスが抜群でした。連載が始まってからは、名古屋出張に合わせて豊橋にも寄るようになりました。

 

 -「だも豊」の誕生秘話を教えてください。 

 帰山:佐野さんとの会話で、豊橋の方言や風習など会話の節々に良い意味での違和感を覚えたのがきっかけです。「豊橋のことを漫画で紹介してみては」と提案しました。

 

 -話を聞いてどう思われましたか。

 佐野:「せめて三河にしてください」とお願いしましたが、いざ描いてみるとネタがどんどん出てきて。二人で「これはいける」と話したのを覚えています。

 

 -印象に残っているネタはありますか。 

 佐野:手筒花火と鬼祭りです。私の地域以外にはない文化なので、気になって取り上げてみました。文化をつないでいくために奮闘する人たちを、漫画というわかりやすい手段で紹介することができて、面白かったです。

力を入れた「豊橋鬼祭」 Ⓒ佐野妙/竹書房
実際の「豊橋鬼祭」=安久美神戸神明社

 -いつも意識していることは。 

 佐野:小学5年で理解できる内容を心がけています。子どもに読んでもらうこともありました。帰山さんに通じないものは、全国の人には通じないと思っています! 

 

 -帰山さんは佐野さんをサポートする中で意識していることは。 

 帰山:下書きの段階で分かりづらい点を助言しています。詰め込み過ぎないようにするのも、共通認識で持っていますね。一つの話は8ページで構成されるのですが、一つの話題を深く取り扱うか、もしくは前後半に分けて二つにしています。説明調になるのもつまらないと思うので。 

 

 -第6巻まで長く愛されている秘けつは。 

 帰山:豊橋のネタの豊富さと、佐野さんの観察眼、書店さんのプロモーションですね。私は北海道出身茨城育ちで東京在住なのですが、他地域と比べてネタの宝庫。佐野さんの話を聞いていてもストックがあるので今後が楽しみです。精文館や豊川堂、アニメイトなど、各書店がコーナーを作ってくれるなど後押しが大きいです。

 

  -今後、どこか描きたい場所はありますか。

 佐野:豊橋まつりの「子ども造形パラダイス」や「地下資源館」を描いてみたいです。

 

手作りが特徴の「豊橋市地下資源館」

 -最後にどんな作品に育ってほしいですか

 佐野:郷土のことを学ぶときに、ちょっとした副読本代わりになればという思いでいます。その子が成長して大人になったとき、豊橋の魅力を外の人に発信できれば、良さが全国に伝わるはずです。私も「豊橋には何もない」と思っていた人間でした。外の友達に魅力を聞かれたときに、すらすらと言えるようになる人がもっと増えたら、書いた甲斐があると思います。 

 

 -帰山さんはどうですか。

 帰山:佐野さんは1巻から異常な熱量で作品に向き合ってくれています。第1巻から描き下ろしを何枚も書いてくれて、本当に頑張ってくれています。それが報われるように、作品を全国の人に広げることが使命です。

「だも豊」の紹介ブース=精文館書店で

■さの・たえ

 豊橋市在住。2007年に竹書房の月刊4コマ誌「まんがライフ」でデビュー作「森田さんは無口」を連載し、11年にアニメ化した。19年には代表作「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」(だも豊)の連載がスタート。豊橋に引っ越してきた女子高生たちが、先輩や友人らから豊橋や東三河地域の名物や風習などを学ぶストーリー。漫画を通して市外に豊橋の魅力を発信中だ。9月に7巻が発売予定。市の広報誌に「だも豊」のキャラクターが採用されたほか、バスケットボールBリーグ「三遠ネオフェニックス」のキャラクター「かげっち」と「おかちゃん」のイラストも手掛ける。最近は「出汁(だし)」にはまっている。

Ⓒ佐野妙/竹書房
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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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