豊橋で整体院経営の高柳さんが解決法など語る
日本人の8割以上が悩まされる腰痛。東京大学と民間企業が手掛けた調査によると、この国の腰痛による経済的な損失は約3兆円という。業務の効率が落ち、疾病リスクが高まるだけでなく、生きがいを断念する原因にも。腰痛に向き合う理学療法士を取材した。
「建物で火事が起きて、火災報知機の電源を切ったら警報音は消えますが、火は消えていない。火を消さなければいけません。痛みを和らげるのは、火災報知機の電源を切るのと同じことです。痛みの原因を取り除かなければなりません」
対症療法ではなく、痛みの原因を取り除く根治療法の必要性を指摘するのは豊橋市大岩町で整体院「コレクトボディ」を経営する理学療法士の資格を持つ高柳智成さん(30)。これまで約3000人の体を診てきた経験からこの結論にたどり着く。
具体例を紹介する。高柳さんの整体院に通う69歳の女性は、10年ほど前に腰に痛みを感じ、脊柱管狭窄(きょうさく)症と診断された。薬を服用したが慢性的な痛みに苦しんだ。そんなある日、立っていることができず、その場に座り込んでしまった。それ以来、女性は遠方への外出や旅行に誘われても迷惑をかけたくないとの思いから断っていた。ある日、娘が孫と一緒に旅行に行くことを提案してくれた。悩んだが、親子三代の旅行を実現したくて高柳さんの整体院に足を運んだ。
女性は「宿題」を出されることになる。最初は座ったままでできる「ストレッチ」。固まった股関節周りの筋肉をほぐす運動だ。続いて姿勢を良くする肩甲骨と骨盤の可動域を広げる「運動」。そしてその動きを支える「筋力トレーニング」だ。これを続けた女性は、まずは豊橋公園を一周歩けるようになり、念願の親子三代の旅行をかなえた。女性は「腰痛によって大好きな旅行や遠出をしばらくしていなかったのですが、今は自信をもって遠出もできるし孫と遊ぶこともできます」と笑顔で話す。
高柳さんは「こちらがどんな施術をしても、本人が努力しなければ本質的な解決はしません。腰の痛みの原因は多岐にわたります。座っている時間が多いこと。股関節や肩甲骨の周辺の筋肉が固まっているから。体の動かし方に問題があるから。筋力が足りないから。理由は千差万別ですが、それぞれの利用者の原因を特定し、体を理にかなった動かし方に改善していくことが肝要です」と話す。
誰もが抱える腰痛の悩み。その解決の方法は一人ひとり違い、すぐに治る「魔法のつえ」はない。痛みを緩和すること以上に、腰痛の原因を根絶する理にかなった取り組みが肝要だ。
【本紙客員編集委員・関健一郎】
なぜ痛いのか、何をすれば原因が除去されるのか。理解して「宿題」をすれば改善も早いという