豊橋市の自動車部品製造「武蔵精密工業」は、同社が開発したアルコール代謝遺伝子検査キットを静岡市清水区の総合物流「鈴与」に寄贈した。「2024年問題」に直面する物流業界の健康経営を支援する。
鈴与の新入社員38人が7月、清水区で開かれた研修で検査を受けた。結果は8月下旬に各個人に送る。
武蔵精密が昨年実施した調査によると、飲酒翌日のパフォーマンスは10・8%悪化することを明らかにしている。疲労感やふらつき感、眠気などが生じることもわかっており、飲酒は翌日にさまざまな影響が出る。自身の体質を知り、適切な飲酒習慣を身につけることが重要となる。
検査は、アルコール代謝遺伝子のタイプを判定する。アルコールとアセトアルデヒド(二日酔いなどの原因)の分解能力の組み合わせから5タイプ9パターンでアルコール体質を判定する。タイプごとに飲酒時の反応や健康への影響などがわかる。また、職場や自宅で簡単に検査できる。専用の綿棒で口の中の細胞を採取し、返送用封筒に入れて投函すれば3週間後にウェブ上で結果を受け取れる。
酒の強さは思い込みや経験値で判断されがちだが、アルコール代謝遺伝子を調べることで生まれ持った体質を把握できる。特に日本人は、遺伝的に分解能力の弱いタイプが多いことが知られている。
鈴与は、検査結果を通じて新入社員が自身の体質と向き合い、日々のパフォーマンス向上や健康管理につなげ、労働生産性向上に貢献することを目指している。
武蔵精密は、22年に植物バイオ事業部を創設し、ヘルスケアとアグリテック分野の新規事業開発を進めている。今回の遺伝子検査キットもその一環として開発した。
【山田一晶】