好きな自治体へ寄付という形で支援できる「ふるさと納税制度」は2008年の導入以降、寄付者、寄付額とも増加基調で推移している。各自治体への昨年度の寄付総額は1兆1100億円と大台に達し、寄付件数も1000万を超えた。魅力的な返礼品開発で他都市へ流出する住民税控除額との収支改善へ向けた取り組みが進む一方、返礼品開発や周知など経費負担増などの課題も残る。
東三河5市の昨年度実績をみると、ふるさと寄付の受入額は蒲郡市が15億6194万円(前年度比12%増)でもっとも多かった。次いで田原市が6億9509万円と前年度から6倍超(517%増)の大幅な伸びを見せた。豊川市は2億7437万円(74%増)、豊橋市も1億3705万円(35%増)と順調に伸びた。
一方、寄付を巡る都市間競争の激化で、受入額と他都市への住民税控除による流出分との差を埋める取り組みが課題として残る。また、自治体では寄付を呼び込む魅力的な返礼品の開発にも前向きで、ポータルサイトへの掲載や宣伝活動にも投資する。自治体にとってこれら経費負担も意外と重いようだ。
◇サイトに1割
東三河では、昨年度の受入額に対する経費負担率は蒲郡が53%ともっとも多く、新城48%、豊橋46%、田原37%、豊川27%と続いた。豊橋市は寄付受入額1億3705万円から経費総額6309万円を差し引いた7396万円が実質受入額で、住民サービスで使える税収となる。
多くの自治体では返礼品の周知で仲介役となるポータルサイトを利用している。「さとふる」「ふるさとチョイス」「楽天」など多様で、東三河の各市は5種類前後のサイトを活用している。より多くの消費者へ露出を高める戦略だ。さらに豊橋市では昨年度から「道の駅とよはし」での買い物に使える現地決済型ふるさと納税サイト「ぺいふる」も導入し、観光誘客の効果も狙う。
ポータルサイトへ支払う手数料などは、豊川市によると寄付額の1割程度。豊川市によると昨年度はサイト経由の寄付受入額から約1割を負担した。負担率はどのサイトも同程度という。
◇制度のあり方
同制度は本来、納税者の意思で応援したい自治体への寄付を支援する制度だが、返礼品の内容や節税対策などが納税者の有力な動機付けに加わった点も指摘される。
ふるさと納税で果物や海産物などの返礼品を受けた豊川市内の女性に寄付先を尋ねると「市町村名をすぐに思い出せない」と話した。
制度を巡る過激な都市間競争で、近年は一部自治体では趣旨とかけ離れた返礼品が並んだこともあった。総務省の対応で落ち着いたが、今後は返礼品を巡る経費などの負担軽減策も新たな課題となりそうだ。
【竹下貴信】