豊橋市牟呂町のウナギ加工販売「カネナカ」の牟呂本社工場が、食品安全の国際規格「FSSC22000」を取得した。ウナギの加工業では東海地方初。全国でも2例目だ。海外では取引要件に含まれることもある規格で、認証取得により海外での販路拡大につなげる。
同社は1900年創業の老舗。元は養鰻業だったが、高度経済成長期に差し掛かる60年代以降は需要の高まりから加工業にも進出。白焼きやたれの蒲焼きをはじめ、日本初の冷凍蒲焼きを作るようになった。
さらに、2005年には国内の生産拡大を狙い、牟呂町に新工場を建設した。ここでいち早く食品衛生の取り組みを始めた。その一つが06年に取得した「HACCP」。食品製造の全工程を「見える化」し、管理する衛生管理の国際規格で、ウナギの加工業で初めて認証を受けた。
ウナギ加工は、骨とりや白焼き、蒸す、たれ付け、5度焼きなどの工程を経て店頭に並ぶが、これらの導線を分けたほか、スタッフの消毒を徹底するなどの対策をした。中村貴洋社長は「原材料の搬入から、製造、出荷までの管理を徹底し、安心安全の面で信頼を勝ち得てきた」と話す。
だが、10年代後半になると雲行きが怪しくなる。「ニホンウナギ」の減少で、ウナギの値段が高騰。東京都中央卸売市場の平均価格は、09年には2300円前後だったが、19年には5000円台に。人口減少と相まって、国内でのウナギの需要が頭打ちとなるなか、13年に就任した中村社長が目を付けたのが、欧米や東南アジアなどの「海外市場」だった。
海外進出のために、強みの「安心安全」を一段階上のレベルにすることを目指した。その一つが「FSSC22000」。21年に義務化された「HACCP」より要件が厳しい半面、認証を取得すれば、海外の取引先や市場でも信頼されやすくなり、国際的なビジネスチャンスが広がる。
中村社長らが中心となり、牟呂本社工場ではさまざまな取り組みを始めた。特に力を入れたのが原材料や資材などを扱うサプライヤーへの評価基準の明確化だ。「資材に付着したアレルギー成分で、大きな事故につながるケースもある。各項目を点数化し、信頼できる相手とだけ取り引きするようになった」と言う。
ほかにも、技能実習生らスタッフへの食品衛生の研修を必須にしたほか、各工場の部門のエリア長らと定期的に食品安全の改善点などを出し合ったり、工場に入室する際には必ず身分の確認をしたり。「どれも当たり前で小さなことだけれど、社員に実行し続けてもらうのは大変。海外の人にもおいしくて安心安全なウナギを味わってもらうために妥協は許されない」と言う。
そのかいあって昨年末に「FSSC22000」の認証が下りた。「1年半かけてやっと」との思いはあるが、「あくまでもスタートライン」と次を見据える。昨年は海外の食品衛生基準や食文化に合わせたたれを開発し、香港やベトナム、カナダなどでも販売するようになった。「将来は海外で自社ブランドの飲食店をつくり、ひつまぶしを出すのが夢。ウナギをおいしそうに頬張る姿を広げていきたい」と笑顔を見せた。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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