田原市伊良湖町の海岸沿いで県が管理していた道路が7月末で閉鎖された。県によると、民有地の賃貸借契約が満了となり、契約更新の交渉が折り合わず断念。現地は海辺の景観やサイクリングロードとして多くの観光客からも人気だ。地元の宿泊施設や飲食店など受益者でつくる「伊良湖岬観光協議会」は10日、存続へ向け県に復活を求める署名活動を始めた。
県などによると、この道路は国民休暇村(現、休暇村伊良湖)の建設に伴い、伊勢湾を見渡す西ノ浜海岸に1970年頃に整備された。県が地権者から賃借し、田原市が指定管理者として維持管理していた。
今回の契約更新では国道259号までつながる約1・6㌔のうち、伊良湖シーサードゴルフ倶楽部付近の約150㍍が対象だった。
現在の契約は2000年、所有者の名古屋鉄道のグループ会社と結んだものだ。この間、19年に名古屋市内の企業へ売却され、賃貸借契約も引き継がれていた。
契約満了と閉鎖の経緯について、県自然環境課の担当者は「昨夏の更新のための交渉で、所有者から買い取りを望む申し出があった。提案された売却額で折り合いがつかず、賃貸借料の値上げも合意に至らず年度内に断念した」と説明した。一方、所有者側は「県との交渉は継続中だ」としている。
道路の閉鎖区間が一部隣接する「伊良湖リゾート&コンベンションホテル」では、裏口にあたる北側の搬入経路がふさがれてしまった。
ホテル社員によると搬入口からは食材などを運ぶトラックから、ボイラー燃料などを運ぶタンクローリーなども出入りする。現在はバックヤード周辺の形状を変更し、利用客と同じ正門から搬入口へ至るルートを整備し直した。
この道路は海岸の夕陽の美しさから「伊良湖サンセットロード」の愛称もある。道路沿いに整備された自転車道は、「トライアスロン伊良湖大会」のコースにも利用され、サイクリストも多く訪れる地域の重要な観光資源だったという。
この日から協議会が署名活動を始め、会員の宿泊施設や飲食店、道の駅など市内の集客施設に専用署名箱を設置した。オンライン署名サイト「チェンジオルグ」でも募っている。11月末まで集めた署名は県に提出、市にも報告して当事者意識を共有したい考えだ。
高橋一将会長は「閉鎖されて改めて道路の重要性が分かった。県と所有者の交渉なので外部から意見できないが、集まった署名で存続への熱意と声を届けたい」と説明した。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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