【蒲郡】破られるベンチアート「たゆたう日陰」|市が繰り返し補修

2025/10/14 00:00(公開)
修繕で天幕を取り外した「たゆたう日陰」と設置された監視カメラ=竹島園地で

 蒲郡市の竹島園地には、天幕の下でくつろぐベンチアート「たゆたう日陰」がある。市民や観光客が利用する一方、設置した天幕をハンモックだと誤解して乗る人や、たばこを押し当てて破損する人がおり、園地を管理する市が補修を繰り返していることが判明した。この状況を受け「蒲郡ベンチアートプロジェクト委員会」などは、市内外の人に現状を伝えるワークショップを26日から始める。

 

 ベンチは海辺などの蒲郡のロケーションを生かし、生活の豊かさを感じられる場を創出することを目指すプロジェクトで制作。委員会が地元企業などに声掛けし、賛同企業や団体と連携して市内各所に設置してきた。

 

蒲郡の自然を全身で感じられる設計

 

 「たゆたう日陰」は、9台目のベンチ。デザインは「学生チャレンジコンペ」で最優秀賞に選ばれた工学院大学大学院の学生2人の作品を採用。腰掛けではなく、蒲郡の地場産業である三河繊維を使用した天幕の下の地面に座り、園地の草花や周辺の海風を全身で感じられるように設計されている。強風にも耐えられる構造だ。天幕は常設用の「グレー」と、特別の時に掛ける「白」の2種類がある。

 

 今年4月22日に市に寄贈する形で設置された。周辺にはベンチの解説パネルとともに「布に体重をかけない!」「ぶら下がらない!」と呼び掛けるピクトグラムと日本語、英語の注意書きを掲示している。

 

4月に設置された時の「たゆたう日陰」

天幕に飛び乗る人も

 

 市によると、異変が起きたのは5月上旬頃。職員が常設用の天幕に、何かが引っかかってできたとみられる2~3㌢の小さな穴を見つけた。穴の開いた部分を縫って補修して再設置したが、6月と7月にも再び穴が開いており再度修繕した。

 

 市は補修を繰り返したことで生地が弱くなっていることを懸念し、委員会などと話し合い、7月30日から原因特定のため移動式監視カメラを置いた。その後、破れることがなくなっていたが、8月12日に布が20㌢ほど破れていたほか、下旬頃から、たばこを押し当てたような溶けた小穴もあり、地面に吸い殻も落ちていた。

 

 9月26日にも布が1㍍ほど破れており、市は補修するとともに記録映像を確認したところ、日中に天幕に子ども複数人が乗る様子や、深夜に男5人が監視カメラの存在を知りながら激しく飛び乗ったり、近くでたばこを吸ったりする姿が映っていた。

 

 現在は補修して再び設置されている。市建築住宅課職員は今後、注意看板を設置するかを含めて検討していくとした。

 

今は天幕を取り付け利用できる

使い方や課題解決へ意見交換 委員会が26日からワークショップ

 

 今回の事態を受け、蒲郡ベンチアートプロジェクト委員会は「たゆたう日陰」の認知度や正しい使い方の理解が不足していることが破損する要因の一つと考え、作品が長く存続し続けるために現状を知ってもらい、作品を大切にするきっかけにつなげようと、ワークショップを企画した。

 

 26日午後1時と11月1日午前11時から、「たゆたう日陰」などでベンチを制作した経緯や、チャレンジコンペの関係者からデザインを採用した理由を聞きながら、参加者とともに大切に使ってもらうために必要なことを語り合い、課題の解決につなげる。参加無料。雨天中止。

 

 同1日午前10時には園地で開催するファッションイベント「ガマラブフェス」に合わせ、デザインを考えた学生らと一緒に天幕を修繕するワークショップも実施する。三河繊維の端材などを使って直しながら、なぜ天幕に三河繊維を活用したのかや、なぜ地面に座ることに注目したのかを感じてもらう。参加無料。雨天延期。

 

ワークショップをPRする大角さんと川口さん㊨=竹島園地で

地元繊維関係者の協力で準備進める

 

 また、同8日午前10時からは、話し合いと修繕の両方の要素を合わせたワークショップを開く。その準備として、委員会は市内の繊維企業からの素材提供や、園地にある「竹島クラフトセンター」の鈴木敏泰さんから修繕のアドバイスを受けながら、作業を進めている。

 

 デザインを考えた1人で、工学院大学大学院修士2年の川口弘誠さんは「硬くて壊れないもの以外の公共物が残り続けるために、どうすればいいのか考えるきっかけになった」と語った。ワークショップについて「いろんな人が関わることで可能性が広がったらいいな思いました」と述べた。

 

 主催者の1人で「たゆたう日陰」の制作に携わってきた大角真子さんは「学生のアイデアを実現しようと、チャレンジする蒲郡市だと思っています。参加者に素晴らしい取り組みを紹介しながら、みんなで対話と作品を直す体験を通じて、楽しく考えることができたら良いなと思っています」と話した。

 

 ワークショップの問い合わせは委員会事務局を務める蒲郡商工会議所(0533・68・7171)へ。

繊維関係者のアドバイスを受けながら準備進める=竹島クラフトセンターで
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林大二朗

 愛知県蒲郡市生まれ。2020年、地元蒲郡が好きで東愛知新聞社に入社。同年から蒲郡担当、市政や地域行事、文化など全般を取材。ドローンを使って東三河の名所を空撮したルポ「大二朗記者の空からの訪問」を不定期連載。これまで、三河大島や三河国分尼寺跡、日出の石門などを空撮してきた。ドローン技術向上のため、国家資格「一等無人航空機操縦士」を24年に取得。読者の皆さんが楽しんでもらえる記事と記憶に残る写真を掲載できるよう、日々、頑張っていきます。

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