岐阜市の動物病院「にじのはしスペイクリニック」の高橋葵院長が5日、田原市の旧渥美町内で飼い主のいない猫40匹の不妊去勢手術をした。東三河には初めてやって来た手術室を備えたワゴン車内で執刀した。
岐阜県高山市のNPO法人「もふっこひだ」が高橋院長に出張を依頼した。メンバーの中に当地の出身者がおり、「猫が増えて大変なことになっている」と相談したことがきっかけだった。NPOの袈裟丸聡美代表らが現地入りして猫を捕獲。地元の地域猫団体「さくらみみ会」が手伝った。
スペイクリニックは、猫の不妊去勢手術を専門とする。「spay」は避妊手術の意味だ。「にじのはし」は2020年に開業。岐阜市に本院を置き、北は宮城県から南は熊本県まで6分院を展開する。専門病院であるため、経費が抑えられるのが特徴だ。「にじのはし」はこれまで、全国各地で2万数千匹の猫を手術してきた。
さらに「にじのはし」は23年から出張手術サービス「モバイルスペイ」を始めた。ワゴン車の荷台部分を手術室に改造した「ニコワゴン」で各地に赴く。田原市には犬猫専用の動物病院がなく、地域猫活動団体は豊橋市や豊川市まで猫を運んで手術してもらう。大きな負担だ。このため23年3月には豊橋市の動物福祉団体「ハーツ」が静岡市の獣医師に来てもらい、公民館を臨時手術室にして猫60匹を執刀したことがあった。
この日は午前9時から手術がスタート。キャリーの中に入れられた猫たちが、倉庫内で待機した。洗濯ネットで包まれている。手術が終わるとブザーが鳴り、ワゴンの中から執刀済みの猫を受け取り、次の猫を引き渡す。手術を終えた猫は麻酔が効いた状態で意識がない。キャリーには毛布をかぶせてある。前半は午後2時までかけて20匹を手術した。
田原市環境政策課の職員も視察に来ていた。市は24年度から不妊去勢手術費補助金を創設した。今回の出張手術費用も市民の申請を通じて補助金が充てられるという。
全国のスペイクリニックはこの5年で倍増するほど増えたが、都市部に集中している。一定の手術件数が見込めないと経営的に成り立たないためだ。高橋院長は「猫を手術したくても病院が近くにないという問題があった。ニコワゴンがそんな地域の人のためになってほしい」と話した。
袈裟丸代表は「高齢者の猫の問題もあり、深刻化している。動物福祉から社会福祉につなげたい」と話した。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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