東栄町の天体観測施設「スターフォーレスト御園」が10月28日午後6時20分、注目を集めていたレモン彗星の撮影に成功した。10月は悪天候が続いていたが、彗星が暗くなる前に、西の山の上に輝く姿を捉えた。
撮影した神谷純平さんによると、レモン彗星が明るくなるかもしれないという情報は、夏休みごろにX(エックス)で見つけた。その後は国立天文台のホームページや彗星情報アプリ「CometBook」で出現場所や時間などの情報を収集していた。
インターネットで彗星の情報を知った人から「彗星を目当てに泊まりに行きたい」という問い合わせも寄せられていたという。しかし、10月は悪天候続きでなかなか観測の機会に恵まれなかった。神谷さんは「せめて彗星が暗くなる前に写真だけでもと思ったところ、晴れてくれて皆さんに見ていただけてほっとしている」と述べた。
彗星は本館の西の山に見えていた。口径60㍉、焦点距離350㍉の屈折望遠鏡にミラーレスカメラを取り付けて撮影した。さらに、その望遠鏡の大きい方の筒(口径125㍉、焦点距離1000㍉)に取り付けた「アイフォーン13」でも彗星を撮影できた。この望遠鏡は宿泊者であれば一晩レンタルすることも可能だ。
神谷さんは「ここ数年、SNSで天文の情報が得やすく、スマートフォンのカメラの性能向上で気軽に星の写真にチャレンジできるようになった。もし天文に興味を持っていただけたら、当館に泊まって星の観察や撮影にチャレンジしていただけるとうれしい」と呼び掛けている。
レモン彗星は、特定の一つの彗星を指す名前ではなく、米アリゾナ州にあるレモン山で続く地球近傍天体捜索サーベイによって発見された彗星群の総称だ。地球に衝突する可能性のある小惑星や彗星を監視するため、日々広範囲の夜空をスキャンしており、その過程で数多くの新彗星を発見している。
今回の彗星は、太陽の周りを非常に細長い楕円軌道を描いて公転しており、その周期は1100年から1350年。前回、この彗星が地球に接近したのは西暦700年代頃とみられ、次に太陽系に帰ってくるのは、西暦3175年頃になると予測されている。
10月21日に地球へ最接近し、今月8日に太陽へ最も接近する「近日点」を迎えた。今後、太陽から遠ざかるにつれて暗くなり、まもなく日本からは観測できなくなる。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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