豊橋技術科学大学の足立望准教授、戸髙義一教授らと、豊田工業大学、大分大学などの研究グループは米テネシー大学・オークリッジ国立研究所と共同で「金属ガラス」が変形する際の起点となる原子集団の動きをシミュレーションによって解明したと発表した。不規則な構造を持つ金属ガラスの変形メカニズムは半世紀以上にわたる謎だったが、数十個の原子による「協調運動」がトリガーであることを突き止めた。成果は13日付で英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
金属ガラスとは、原子が規則正しく並んだ結晶構造を持たない非晶質(アモルファス)状態の金属を指す。通常の金属は原子が整然と並ぶ結晶体だが、金属ガラスは液体のように原子が不規則に配置されたまま固まった「異形の素材」だ。
この特殊な構造により、一般的な金属に比べて極めて高い強度と弾性を持ち、摩耗や腐食にも強いという優れた特性を備える。一方で、外部からの力に対して粘り強さに欠け、前触れなく突然破壊される「もろさ」が実用化への大きな障壁となっていた。
材料が壊れる際、内部には「せん断帯」と呼ばれるずれが帯状に発生し、そこから一気に破壊が進む。しかし、金属ガラスは原子配置が不規則であるため、どこが変形の起点になるのかを特定することはこれまで不可能だった。
研究グループは、変形の引き金となった原子の動きを切り分けて追跡する独自手法「原子凍結解析」を開発。解析の結果、特定の場所に固定された欠陥ではなく、外部からの力に応じて平均約40個の原子が突如として一斉に動き出す「協調運動」を確認し、これを「STZコア」と命名した。
この一つのコアの動きが周囲の原子を動かし、雪崩のように連鎖(カスケード)することで、最終的に大きな変形や破壊に至るメカニズムが浮き彫りとなった。今回の発見は、金属ガラスに限らず、ポリマーやゲルなど不規則材料全般の変形予測に寄与する。割れやすいガラスを「粘り強く使う」ための材料設計や、土砂崩れといった巨視的な破壊現象の理論構築にもつながる画期的な成果として期待される。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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