豊橋技科大、結核の新薬候補11種を提案 タイの大学と「富岳」駆使し共同研究

2026/05/26 00:00(公開)
橋技科大などが提案する新しい結核治療薬の概念図
橋技科大などが提案する新しい結核治療薬の概念図

 豊橋技術科学大学は、高精度な分子シミュレーション技術を使い、結核の新しい治療薬の候補となる化合物を提案したと発表した。タイのウボンラチャタニー大学との共同研究による成果で、スーパーコンピュータ「富岳」などを駆使し、既存の薬よりも効果が高く毒性が低い11種類の化合物を導き出した。

 

  結核は世界中で恐れられてきた感染症で、さまざまな治療薬があるが、一部の薬には体内の薬物代謝酵素「シトクロムP450」(CYP)を活性化させてしまう副作用がある。この酵素が働きすぎると、一緒に飲んでいる他の薬を分解してしまい、治療の効果を下げてしまう点が課題だった。そのため、この酵素の働きを抑える「阻害薬」の開発が求められていた。

 

 研究チームは、酵素の活動の中心にある「ヘム鉄」という鉄の成分に注目した。この鉄と阻害薬が結びつく仕組みを再現するため、鉄の周囲の電気的な性質などを細かく計算できる新しいシミュレーション手法を開発した。従来の計算では難しかった正確な結びつきを再現することに成功し、薬が酵素のどのアミノ酸と強く反応しているかを電子レベルで分析した。

 

  この分析結果をもとに、既存の薬の構造の一部分を別の分子に置き換える方法で、より強力に酵素と結びつく候補を網羅的に探索した。その結果、毒性が低く、薬として適切な特徴を持つ11種類の新しい化合物を特定し、そのうちの2種類は従来の阻害薬よりも強力に酵素の働きを抑えられることが分かった。

 

  今回の新薬候補は、結核菌そのものではなく、結核菌が外に出す酵素の働きを邪魔する仕組みになっている。菌に直接作用しないため、結核菌が形を変えて薬に抵抗力を持つようになる「耐性化」が起きにくく、長期間にわたって効果が期待できるという利点がある。

 

  研究室では、今回開発した計算手法を他の病気の酵素にも応用し、タイの研究室で実際に化合物を合成して細胞実験を行う計画を進めている。10年以上に及ぶタイとの国際交流をさらに発展させ、実用的な結核治療薬の完成を目指す方針だ。

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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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