豊橋技術科学大学と大阪公立大学、米ペンシルベニア州立大学の国際共同研究チームは、環境に優しい次世代の電子部品材料として期待される「Mn添加ビスマスフェライト(BiFeO3)薄膜」について、部品が劣化する仕組みを解明したと発表した。スマートフォンなどに不可欠な材料の弱点を見つけ出したことで、より長持ちする環境配慮型の製品開発につながると期待されている。
私たちが普段使っているスマートフォンや医療機器、自動車には、電気を加えるとミクロな動きを生み出し、逆に力を加えると電気を生み出す「圧電材料」という特殊な物質が数多く使われている。現在、この微小電気機械システム(MEMS)デバイスの主流となっているのは「PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)」という物質だが、名前に「鉛」が入っている通り、環境や人体への悪影響が懸念されている。そのため、世界中で鉛を使わない材料への置き換えが急務となっている。
鉛を使わない有力な候補として注目されているのが「鉄酸ビスマス(BiFeO3)」などをベースにした材料だ。しかし、この材料には、電気が漏れやすく、長期間使っていると壊れやすいという弱点があった。これまで、なぜそのように劣化してしまうのか、詳しい仕組みはわかっていなかった。
今回、研究チームはこの非鉛材料の薄膜に対して、これまでPZTで培われてきた信頼性を評価する手法を適用し、ミクロの視点から劣化の原因を探った。その結果、材料の中にある「酸素空孔」と呼ばれる、いわば酸素が抜け落ちてできた「穴」の存在が大きな鍵を握っていることが判明した。
材料の厚み方向に対して、この酸素の抜け穴は均一ではなく、偏って分布していることがわかった。さらに、部品を動かすために電圧をかけると、この抜け穴が電場に引かれて材料の中を少しずつ移動し、片側に集まってしまう。抜け穴が片側にたまると、電気が通りやすくなってしまい、結果として部品の電気抵抗が下がり、劣化につながってしまう。また、この新しい材料は、従来のPZTと比べて酸素の抜け穴が約1桁も動きやすい性質を持っており、これが寿命を短くしている直接の原因であることも突き止めた。
研究をリードした豊橋技科大の吉村武教授(電気電子材料)は、材料の弱点を正確に把握できたことが、次世代の材料作りに向けた確かな一歩になると説明している。今回の成果により、この材料は現時点では、センサーや振動発電など比較的弱い電圧で動く機器には適していることがわかった。今後は、強い電圧をかけても壊れないように、酸素の抜け穴を制御する品質向上に取り組み、新たなデバイスへの展開を目指すという。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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