豊橋技術科学大学の情報・知能工学系に所属する視覚認知情報学研究室と認知神経工学研究室の研究チームは、人の顔色の連続的な変化が表情の判断にどう影響するかを調査し、顔色変化の過程よりも最後に見た顔色が判断に影響する「終端色の優位性」を明らかにした。
これまで、顔色の赤みが怒りの印象を強めることは知られていたが、時間的に変化する顔色が表情認知に与える影響は分かっていなかった。過去の研究の多くは、顔色が固定された静止画像を用いていたためだ。
研究チームは、顔色が変化する場合と変化しない場合で、表情の受け取り方の違いを心理物理実験で検証した。実験では、恐怖から怒りの表情へ徐々に変化させた中間の顔画像を使用。顔色の条件として、赤みが1秒間かけて「増していく」「減っていく」「常に変わらない(元のまま)」「常に赤いまま」という4種類を設定し、参加者に怒っているか恐れているかを判断させた。
実験の結果、最終的に赤みが強い顔は、変化があったかどうかに関係なく、より怒りとして判断されやすいことが判明した。これは、最後に見た顔色が記憶として残り、表情判断に影響を与えた可能性を示唆する。他者への印象形成は、変化の過程よりも、最終的な状態に影響されやすいのかもしれない。
研究第一著者である情報・知能工学専攻博士前期課程1年の澁澤美空さんは「顔色が赤色に変化していく過程が重要なのではなく、最終的に赤い顔である方がより怒りと知覚されやすいのではないかと考え、研究に着想した」と説明した。
研究成果は10月9日付で「ジャーナル・オブ・ビジョン」誌上にオンライン版が発表された。
今後は、実際の顔で起こる血流や皮膚の色素成分など、より自然で複雑な顔色変化を再現した実験を行い、現実場面に近い条件での検証を進める方針だ。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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