時差ぼけ治療薬開発へ 豊橋技科大など 自然なら再調整に7日、飲めば4日に

2026/02/08 00:00(公開)
豊橋技科大の発表資料から
豊橋技科大の発表資料から

 豊橋技術科学大学次世代半導体・センサ科学研究所の沼野利佳教授や金沢大学、大阪大学、東京科学大学などの共同研究グループは、哺乳類の体内時計の針を強制的に「前進」させる新たな化合物「Mic―628」を発見したと発表した。マウスを使った実験では、飲むタイミングにかかわらず体内時計が進む効果が確認されており、治療が難しいとされる東向き移動に伴う時差ぼけや、交代勤務による睡眠障害の解決につながる成果として期待される。

 

 私たちの体には約24時間周期のリズムを刻む「体内時計」が備わっているが、海外渡航などで環境の時間と体の時間にずれが生じると、睡眠障害などの時差ぼけ症状が現れる。特に日本から米国へ向かうような東向きの移動では、遅れている体内時計を「前進させる」必要があるが、時間を遅らせる場合に比べて生理的に難しく、同調するのに多くの日数を要することが知られていた。光を浴びて調整する既存の方法もあるが、作用させる時刻に制約があるなど、簡便な手法は確立されていなかった。

 

 研究グループは今回、体内時計を構成する時計遺伝子の一つである「Period1(Per1)」に着目し、この遺伝子の働きを特異的に高める化合物「Mic―628」を特定した。実際に6時間の時差ぼけ状態にしたマウスにこの化合物を経口投与したところ、通常であれば環境の時間に再同調するまで約7日間かかるところが、わずか1回の投与で4日間へと大幅に短縮された。この化合物は、脳にある時計の中枢だけでなく、肺など全身の末梢組織にある時計も同時に前進させることができ、行動リズムを常に約2時間早める効果が確認された。

 

 分子レベルの解析によると、Mic―628は細胞内で特定のたんぱく質複合体の形成を促進し、Per1遺伝子のスイッチとなる「二重E―box」と呼ばれる配列に作用して転写を活性化させる。さらに、誘導されたたんぱく質自身がブレーキ役となって転写を抑制する「自己抑制機構」が働くため、不安定にならずに時計を確実に前進させることができるという。

 

 Mic―628の特筆すべき点は、投与するタイミングにかかわらず、体内時計を「進める」方向にのみ作用する性質を持っていることだ。研究グループは、服用のタイミングを厳密に管理しなくても効果が得られる「スマート薬」としての特性を生かし、将来的には安全性評価を経て、ヒトの実用的な時差ぼけ治療薬や体内時計調整薬への開発につなげたいとしている。

 

 研究成果は1月、米国科学アカデミー紀要(PNAS)のオンライン版に掲載された。

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