兵庫県立大学環境人間学部の宇野康司教授、愛知大学経営学部の古川邦之教授、日本大学文理学部の金丸龍夫准教授、関西学院大学生命環境学部の壷井基裕教授らの共同研究グループは5日、粘性が非常に強い流紋岩溶岩の表面に形成される「しわ状構造(褶曲=しゅうきょく=構造)」が、表面の固結後も冷却プロセスの中で継続的に変形・成長していたことを古地磁気学の手法を用いて世界で初めて定量的に解明したと発表した。研究成果は9月30日付の国際科学誌「Earth, Planets and Space」に掲載された。
流紋岩はマグマの粘性が高く、噴火すると厚く大規模な溶岩流(溶岩体)を形成するため、流出が始まると周辺地域に深刻な被害をもたらす可能性がある。しかし、流紋岩溶岩が噴出して流れ出る過程を直接観察できた科学的記録は、現代の観測史上でも南米チリで生じた2例しか存在せず、流動や変形の詳細な仕組みの解明は難航していた。
そこで研究チームは、静岡県伊豆半島中央部に分布する約3100年前(紀元前1200年頃)に噴出した「カワゴ平流紋岩溶岩」に着目した。この溶岩は噴火時期が比較的新しいため表面の凹凸地形が良好に保存されており、中流域で波長約50㍍の鮮明なしわ状構造が観察できる。
研究チームは、岩石の中に含まれる磁鉄鉱の性質を利用した「古地磁気学」による分析を行った。磁鉄鉱は温度が約580度以下に冷える際に、その時点における地球の磁場(地磁気)の方向を記憶する特性を持つ。岩石が一度固まった後に傾いたり動いたりして向きを変えると、内部に記録された磁気の向きも一緒に回転するため、複数の温度域で磁気の偏りを解析することで固化後の変形プロセスを再現できる。
解析の結果、溶岩表面の外皮(固まった表面部分)は、自身の温度が約580度以下まで低下してカチカチに固結した後も、しわの波長をより短く折りたたむ方向へ継続的に回転・変形を続けていたことが判明した。これは、固まった外皮の内側に約900度の高温で溶融した状態の溶岩が閉じ込められており、内部の溶岩が繰り返し流動することで生じる圧力変化によって表面の外皮が押し出され、変形したためと考えられる。
「溶岩は表面が固まれば動きも止まる」という従来の概念を覆す研究成果は、流紋岩溶岩の成長や停止の仕組みに新たな視点を与えるものだ。将来的な噴火時の溶岩流の流動範囲の予測や、火山災害リスクの評価向上に大きく貢献することが期待される。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。