元プロボクサー・金子大樹さんインタビュー

2018/01/09 00:00(公開)
元プロボクサーで今はサラリーマンの金子さん=母校・市立田原中学校前で
 昨年現役を引退した田原市出身の元プロボクサー・金子大樹さん(29)=元日本スーパーフェザー級王者、生涯戦績35戦26勝(18KO)6敗3分。現在は神奈川県横浜市でサラリーマンとして働く。正月休みで帰郷した金子さんに約13年間の現役生活を振り返ってもらった。
 ―改めて現役生活を振り返って。
 金子 いろいろありましたね。16歳で横浜へ来て、翌朝に目覚めて「本当に来たんだな」と。(横浜に)来たくて来たので「現実を思い知らされた」という感じとはちょっと違うかもしれませんが。けれど、そこで「やるしかない」と覚悟を決めることができました。「チャンピオンになる」って言って田原を出たんで(笑)。
 ―不安は?
 金子 不安とか、怖さとかはあまり思わなかった。毎日が必死で考える余裕もなかった。最初の頃はガソリンスタンドでアルバイトしながら、毎日出勤前に走って、仕事して、夕方5時からジムで2~3時間トレーニングの生活サイクル。その頃はボクシングに無我夢中だった。
 ―中学校を卒業して横浜光ジムへ入るまでは?
 金子 豊橋のジムに通っていて、親からの言葉もあり、憧れの畑山隆則さんがいる横浜光ジムでやりたいと考えていました。ちょうどボクシングマガジンを見ながらジムを探していて、その時は大阪か横浜かで迷ってたんですが、直感的に横浜光に決めました。
 ―横浜へ行って最初に直面した堪えた出来事や苦労はありますか。
 金子 うーん。ボクシングが楽しくて、苦しさや嫌だなという感じはなかった。楽しくて楽しくて、早くジムに行きたかった。でも、もちろんきつくて、先輩と練習してボコボコにされて。でも「なにくそ」ってやってました。
 ―初めて迎えた減量の思い出は?
 金子 減量の仕方を細かく教えてくれる訳ではなくて、自分で考えなきゃならなかった。ただ食べずにいたんですが、痩せるけど動けなくて。いやあ、きつかったですね(笑)。ジムの階段すらきつかった。
 ―試合に勝利した時はどんな気分?
 金子 勝った時のうれしさというのはものすごいもので、苦しかったこととかは全部忘れる。中毒みたいな(笑)。応援してくれる人たちと喜び合うのも本当に最高です。
 ―プロ第1戦目はどんな気持ちでしたか?
 金子 いざリングに上がってみると、ちょっと怖かったですね。もう負けられないみたいな。でも鬼気迫る感じの雰囲気で試合に勝つというのはものすごい喜び。KOなんて最高ですよ。
 ―初の世界戦だった内山高志選手との一戦は。 
 金子 日本タイトルを4度防衛をして、東洋か世界かを考えていた。その時にワタナベジムから声が掛かった。当時は「何でもやってやるよ」ぐらい自信満々だったし、世界戦はありがたかった。内山選手のボクシングスタイルが好きで尊敬していた面もあって、参考にしながらやっていた。その選手と対戦できるのはすごいうれしかったんですけど、世界の壁を感じさせられた試合でした。ゴングが鳴って構えて、「ちょっとやべえな」「遠いな」「当たらないな」ていうのが感覚的に分かりました。向こうは自分の呼吸とかを見ながら、反応させないような攻撃をしてくるんで、我慢するしかなかった。最初から打たれてもいいという覚悟だったので、捨て身でしたね(笑)。10ラウンド(R)にダウンを奪ったんですけど、11Rからより攻撃的に反撃をされて、真骨頂を見せられました。試合後は「どんだけ打たれ強いの」て言われました。
 ―引退を決意した瞬間は?
 金子 世界ランカーと対戦したロシアでの最後の一戦はすごく懸けていたので、分岐点になることは分かっていた。結果は判定負けでしたが、調整も上手くいって、試合ではベストを尽くせて、思いっきりできたので「引退しようかな」と。ただ、すがすがしかったです。一番最初に奥さんに伝えました。
 ―夢や目標に向かって挑戦する心構えなどはありますか? 
 金子 経験を積んでいく中でいろんな人と関わるようになって、成長するにつれて、応援してくれる人が増えていって、集まってくれた。いろんなアドバイスや教えを吸収しようとしてきたけれど、その結果、いろんなことをやりすぎて自分のボクシングがぎこちなくなっていった時期があった。その時は自分が楽しくてボクシングをやっていた頃にどうゆう気持ちでやっていたかを振り返った。そこからまたボクシングが楽しくなりました。
 ―今の仕事は。
 金子 住宅設備関係のリフォーム会社に勤めています。今の仕事は忙しくさせてもらっていてありがたいです。ただ、ボクシングをしていた頃に比べるとやはり刺激はないですね(笑)。
 ―今後はどのように過ごされますか?
 金子 いずれは地元に帰りたいと考えていて、将来的には地元でジムを立ち上げたいという気持ちがあります。ボクシングに携わっていきたいですね。
 ―ありがとうござました。
(千葉敬也)
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