かつて「蚕都(さんと)」と呼ばれ、玉糸製糸の一大産地として栄えた豊橋の伝統を現代につなごうと、市内の染織作家、奥中竹代さんが主催する「野良桑(のらくわ)養蚕プロジェクト」の第4期ワークショップが開かれている。5月下旬には市内で中間報告会があり、参加者が大切に育てた蚕を持ち寄って飼育状況を確認した。
プロジェクトは、周辺一帯に今も野生のまま残る桑の木(野良桑)を探すところから始まる。「公園や豊川河畔など、探してみると植栽されていない桑が意外とある」という。自ら街を歩いて見つけた木の地主と交渉する中で、かつて蚕を飼っていた当時の記憶や思い出話が広がるなど、歴史を振り返る温かい交流の輪も生まれている。
参加者は自ら集めた桑の葉を与えて蚕を飼育し、できた繭から糸を引いて、織りまでの工程を体験する。初年度は帯に挑戦し、第2期と第3期は2年間かけて一反の着物を制作してきた。
4年目の今期は、参加者30人が4月から活動を開始。5月上旬に約1000頭のふ化した蚕を分け、各自が自宅に持ち帰り、毎日新鮮な桑の葉を与えたり、人工飼料を取り寄せたりして丁寧に育ててきた。5月23日に開かれた中間報告会では、元気に育った蚕を前に、家庭での温度管理や湿度管理の工夫、餌となる桑の葉の具体的な入手方法などを発表し合った。近隣の薬剤散布による全滅リスクと背中合わせという課題を共有しつつ、順調な生育を喜び合った。6月下旬には、白く美しい繭を持ち寄る予定だ。
今期は、蚕の糸から生糸に近い質感の「羽衣のような布」作りに挑戦するという。7月に座繰り機を使って繭から生糸をつくり、10月中旬からは手織り機を用いて、参加者が一本一本作った糸を順番に織り込む体験をする。完成した布は、11月に開かれる「二川宿アートプロジェクト」で、第1~3期の作品とともに展示予定だ。
「糸になって布になるところまで体験し、みんな感動している。生きものに対して優しくなれるし、環境にも思いを寄せられる」と奥中さん。「糸を取るためには、最も良い状態の繭で蚕を殺すという強い葛藤もあるが、自分の手で命を美しい布へと変える過程を半年かけて体験することで、絹という素材や着物に対する見方が変わっているようだ」と語る。
プロジェクトについて「産業としては難しくても、楽しみながら文化をつなぐ活動。ワークショップとして今後継続できるかは分からないが、皆さんのデータをまとめ、豊橋の歴史が育んだ手仕事の温もりを何らかの形で次の世代へ残したい」と話している。
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愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後、校閲記者として入社。1年後に報道記者に転身した。2020年から報道部長。芸術、福祉、経済・奉仕団体などを担当する。趣味は、かなりジャンルに偏りのある読書と音楽鑑賞。思考のそっくりな一人娘と趣味を共有している。
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