漁業などに活用が期待される水中ドローンを長期間常駐させるため、海中で充電できる「ワイヤレス給電」のシステムを豊橋技術科学大学の田村昌也准教授らの研究チームが開発した。水質管理や養殖ネットの清掃など海中での作業を効率化するスマート漁業のカギを握る技術として期待されている。
海中を潜航するドローンはバッテリーを動力源とし、現状では充電のために何度も海中から引き上げことが必要だ。海中に給電ステーションを置けば充電のため回収する手間も省ける。ドローンと給電ステーション双方から情報通信でき、海中で採取したデータの回収も可能になる。
ワイヤレス給電は移動物体に装着する受電ユニットへ送電ユニットから電気を送る仕組み。従来はコイルの磁界で伝送する方式が多い。着床なしで給電できる一方、大掛かりな装置のため移動時の破損リスクも残る。
今回の研究では海水中の高周波電流を生かすことに着目した。
海水を介した実証実験では、受電ユニットを搭載したドローンで送受電の効率を検証した。送電距離2㌢で94・5%、15㌢離れた状態でも85%以上、1㌔㍗の大きな送電時も93%を維持した。また、淡水でも同程度の効率だった。ほか、ワイヤレス通信で帯域幅と容量の安定性も分かった。
送受電ユニットに使う4枚の電極は薄型平板で軽量化を図った。ドローン本体に装着する受電器などのユニット重量は約270㌘に押さえた。この他、着常時の衝撃を抑えるクッション構造もとり入れた。
日本の漁業は人手に頼る高負荷作業が多く、高齢化などもあって就業者の減少が深刻だ。養殖業などでは水質や生育状態の管理など資源保全も必要で、作業の自動化や無人化などスマート化が課題となっている。
今後はドローン内部への受電器実装、内蔵型ドローンに合わせた総電器構造の改良などを進めるという。研究課題について田村准教授は「ドローンの設計を大幅に変えることなく運用できる。最終的には陸上ですべて管理できるシステムにしたい」と説明した。
【加藤広宣】