ナーシングホーム「ミトリ」が豊橋市西幸町にオープンして1カ月になる。最前線の住宅型有料老人ホームを取材した。
ナーシングホームは、介護だけでなく、看護師を中心とした医療提供や看取りをする老人ホームを指す。けがや病気をしても、最後まで医療機関で治療してもらうのは超高齢化社会の現在では難しい。病院からも在宅での治療や療養を求められるが、家族だけでの対応はほとんど不可能だ。そこで、医療と介護が一体となり、本人らしい余生を過ごせるターミナルケアの新しい形として注目されているという。
ミトリは2階建て延べ1184平方㍍。9畳の個室が30ある。1階は状態の良い人が、2階は重い人が生活する。部屋は電動ベッド、洗面用の水回りがある。テレビや冷蔵庫を置くことも可能だ。
特徴的なのは、賃貸借ではなく「部屋の利用権を売る」という発想だ。敷金や礼金は不要だし、状態が悪くなって2階に移動する際も契約更新は必要ない。そのうえで、一般社会のアパートの部屋のように利用できる。利用者ごとに違うかかりつけ医、かかりつけ薬局、ケアマネジャーが、部屋へ通ってくる。
驚いたことに、家族と一緒でなら、個室内で酒も飲めるという。施設長の大林三恵子さんは「制約の多い病院では不可能。たとえば、亡くなる時は大勢に見守られていたいと思っても無理な場合がある。秋だから、せめてブドウを一口、含ませてやりたいと思っても断られる。それがここでは可能です」と語る。自由度が高いのだ。
部屋の壁紙も2種類用意した。何気ないことだが「寝たきりの人にとって、ずっと白い壁を見ているより、少しでも変化があった方がいい」と看護師主任の長谷川知里さんは言う。
利用者を24時間見守るスタッフのための工夫も随所にある。オンライン研修が可能な大きな会議室を備えた。医師らと連携し、スタッフのスキルアップ研修が開ける。また、男性用更衣室には個室トイレも設けた。スタッフに最良の環境を提供し、最良のケアをしてもらうためだ。
大林さんは「今までのケアは制約が多かった。家族の『ああしてやりたい、こうしてやりたい』という思いを、利用者に落とし込めるのがミトリ」と語った。
問い合わせはミトリ(0532・39・5111)へ。サイト(https://www.mitori.care)にも詳細情報がある。
【山田一晶】
モデルルーム。左は定額制のアメニティーグッズ
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