地域特集(八町、松葉、松山、新川、向山)

2023/07/08 00:03(公開)
歩行者天国が開かれる日は家族連れらでにぎわう(広小路通り)
<わがまちと生きる 地域特集>
八町、松葉、松山、新川、向山校区は豊橋の中心部。「駅前」や「まちなか」と呼ばれるエリアだ。豊橋市の盛衰を反映する広小路通りや、大きな緑地、豊橋の名前を冠した公園など、市のシンボルが多くある。本紙に掲載した同特集の中からピックアップしてお届けしよう。
【夏目敬介、本紙客員編集委員・関健一郎】

<広小路通り、ときわアーケード>
 豊橋の繁華街といえば、今も昔も「広小路通り」だ。歴史は古く、データベース「豊橋百科事典」によると、もとは「新停車場通り」と呼ばれた豊橋市道(広小路1号線)。明治43年9月に着工し同45年に完成。大正14年に豊橋電気軌道(豊橋鉄道)市内線が開通し、この通りを中心に街が栄えた。
昭和20年の豊橋戦災により多くの建物が消失。戦災復興土地区画整理により道路が拡張整備され、路面電車は昭和25年に「駅前大通り」へ移設された。市は平成2年に、広小路一丁目~中世古町を道路愛称「広小路通り」として認定した。
 広小路は豊橋の繁栄の象徴。過去にはデパートや映画館などが立ち並び、昭和45~同61年には歩行者天国が開かれていた。今は人口減少などもあり、かつてほどの熱気はないものの、豊橋の目抜き通りとして、まちなか活性化の舞台として、さまざまなイベントにも活用されている。
 通りには「精文館書店 豊橋本店」をはじめ、複合ビル「ユメックスビル」があるほか、マクドナルドといったファストフード、ベトナム料理、チーズ料理専門店、タコス専門店などのグルメも豊富。路地に入れば一人数万円という高級料亭も多くある。
 精文館書店の隣の道はアーケード(ときわ通り)で、コーヒーメーカーの「ワルツ」、人気クレープ店「ロジャー」、新鮮な魚介料理が人気の「マルカイ水産」など、飲食店を中心に名店が軒を連ねる。
 歩行者天国は平成24年に復活。年に10回ほど開催されている。ここ数年は新型コロナウイルス禍で中止が続いたものの、今年は3月に「ホコ天にはたらく車がやってくる!」、今月4日に「肉祭り」が開かれるなどで盛り上がり、人の波でごったがえした。
 駅前の開発が進み、「まちなか広場」や「豊橋駅南口駅前広場」などでも大規模なマルシェやイベントが開かれるようになった。それでも、にぎわいの中心は、やはり広小路通り。豊橋に暮らす人にとって、それほど特別な場所なのだ。

<まちの八百屋・八百雅>
 萱町通り沿いに3月、八百屋の「八百雅」がオープンした。田原産の野菜をメインに扱う。「機械的にレジを通すだけの商売は味気ないなと思いました。昭和の八百屋を令和でやってみたらおもしろいんじゃないかと」。代表の山口雅史さんは開店の経緯を語った。
 店内は仕切りがなく開放的。今風なしゃれた作りだ。棚には旬のものから定番まで、朝に田原の市場で仕入れた商品を中心に新鮮な野菜や果物が手頃な価格で並ぶ。。
 取材中、近くで飲食店を開いている人が食材の仕入れに訪れた。山口さんは気さくに声をかける。「大根どう?安いしお得だよ。たくさん買って、たくさん儲けてよ」とイチオシを案内。客は「うーん、大根かぁ」と思案するも、野菜を見ると「確かに良いね」と、その鮮度に納得。並んでいたすべてを買っていった。山口さんは「お客さんとのコミュニケーションを大切にしたい。お店で雑談を楽しむ人も居る。うちで買った商品を近所へおすそ分けする人もいて、そこでも会話が生まれる。コミュニケーションの輪が生まれる場所にしたい」と店の展望を語った。
 オープンから3ヶ月。客足は少しずつ増えているものの、経営はまだまだ厳しいという。「雨が降ると店の前の人通りは一気に少なくなる。苦しいけど、最初から上手くいくことなんてほとんどない。やらずに後悔するのは嫌だったから、今は充実している。何年後かに、みんなが顔を見せに来てくれる、まちの八百屋を目指して」と、山口さんは豪快に笑った。
 店の営業時間は午前10時~午後7時30分。不定休。

<豊橋祇園祭4年ぶり本格開催>
 来月21日から3日間にわたって行われる豊橋祇園祭は「打ち上げ花火大会」を4年ぶりに復活させ、新型コロナウイルス感染症拡大前と全く同じ規模で開催する。
 江戸時代に日本三大花火と言わしめた「三河の吉田」の豊橋祇園祭は、コロナ禍により3年間、中止に追いやられた。3年前は9本の手筒花火のみ、2年前は30本あまりの手筒花火のみ、去年はおよそ160本の手筒花火と頼朝行列などの本祭りは行われた。今年度は、頼朝行列や笹踊りなどの本祭、コロナ禍前と同じ規模の手筒花火およそ350本、それに打上花火と、コロナ禍の前と完全に同じ内容での開催が実現する。
 豊橋祇園祭奉賛会の酒井数美会長は「本当に喜びもひとしおです。すべての仲間が、毎年当たり前にできたことがこれだけありがたいことだと痛感しました。参加者全員、ブランクが開いているのが課題です。4年前の資料を引っ張り出して、いろいろ思い出して準備をしています。火薬を扱うので、もう一度安全を徹底することが最大のテーマです。警察や消防などの関係先も担当者が変わっているので、緊密な連携をとって、事故が起きない環境を整えていきたいです」と喜びとともに抱負を語る。
 4年ぶりの本格開催は、450年以上続く祭りの伝統の継承をより確かなものにしている。親子3代で手筒花火を上げているのは藤城達弥さん(82)、寿彦さん(52)、篤史さん(27)。達弥さんは、すでに引退をしているが、今も花火を上げ続けている寿彦さんは、父である達弥さんから手筒の作り方や、放揚する姿勢などについて、何年も時間を共有する中で数えきれない助言を受けてきた。
 寿彦さんは「基本的には親が子どもの責任を持ちます。私も父から教わったことを息子にも伝えていきます。私が所属する指笠町はずっと事故がありません。町のやり方を伝統として受け継がなければなりませんが、これは現場でしか伝えられないことなので、この3日間を通して多くのことを子どもに伝えていきたいです。変えてはいけないことと変わらなければならないことを考えて、豊橋祇園祭を後世に伝えてほしいし」と目を細める。
萱町通りに映える真っ白なのれんが目印(八百雅)
高々と火柱があがる手筒花火(豊橋祇園祭)
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