豊橋技術科学大学の研究チームは、脳が無意識のうちに錯覚による明るさを処理していることを明らかにしたと発表した。一方で、その情報は意識に上る速度を早める効果は持たないことも分かり、脳の無意識下での視覚処理が二段階の構造になっている可能性を示した。
情報・知能工学系の認知神経工学研究室と視覚認知情報学研究室の研究チームは「グレア錯視」と呼ばれる現象に着目した。これは、中心部分の実際の明るさが同じでも、周囲のグラデーション(輝度勾配)によって中心がより明るく光り輝いているように見える錯覚だ。
実験では、片方の目にノイズ画像を高速で見せ続けることで、もう片方の目に見せている画像を無意識下に抑え込む「連続フラッシュ抑制(CFS)」という特殊な手法を使用。被験者が無意識下にある刺激をどのように処理しているかを検証した。
その結果、錯視による明るさは、刺激が意識に上るまでの時間(見え始めるまでの速さ)を短縮させる効果はなかった。つまり、脳が意識的に「見える」と判断する競争においては、錯覚による明るさよりも、実際の光の強さ(物理的な信号)が優先されることが示唆された。
しかし興味深いことに、刺激がまだ意識的に見えていない状態であっても、被験者はどちらが明るいかを偶然以上の確率で正確に言い当てることができた。これは、脳が無意識のレベルですでに錯視による明るさの違いを処理・識別していることを意味する。
研究チームの仙田大空さん(博士前期課程2年)は「脳は本人が気づかない無意識のうちに、錯視による複雑な明るさ情報を処理している。しかし、意識への優先権を争う場面では物理的な信号が優先されるという、二段階の構造が明らかになった」と説明する。
今後は、この無意識下の錯視が瞳孔の反応や脳活動にどのような影響を与えるかをさらに検証し、人間が物体を見るメカニズムの解明を目指すとしている。
研究成果は、10月21日付の国際学術誌「Consciousness and Cognition」オンライン版に掲載された。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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