豊橋技術科学大学は10日、科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の未来共創分野に採択されたと発表した。豊橋市や豊橋信用金庫と連携し、東三河地域の農業と先端技術を融合させた「アグリビジネス共創拠点」の構築を目指す。
プロジェクトリーダー(PL)には、同大情報・知能工学系の上原一将准教授が就任した。農業人口の減少が進む中、従来のアグリテック開発で課題となっていた「技術先行・人後追い」の構造を変えるため、上原准教授の専門である「人間情報学」のアプローチを導入する。また副PLとして豊橋市の稲田浩三副市長、豊橋信金の宮川直樹専務理事、技科大の先端農業・バイオリサーチセンターの磯山侑里特任助教が就く。拠点設置責任者は滝川浩史副学長。
具体的には、熟練農家が持つ高度な経験や勘(暗黙知)を脳神経基盤の理解などを通じてデータ化(形式知化)し、誰もが使える技術へと変換する。人間中心設計の技術開発により、労働負担の軽減や収益性の向上を図り、新規就農者が参入しやすい「次世代型産地」の形成を狙う。
上原PLは「人間情報学と、日本の未来を支える地域農業との新たな接点から、革新的な研究と社会実装に向けた取り組みができることに、強い期待を抱いている。『人の知』を形式知化する技術こそが、熟練農家の高度な『暗黙知』を解明し、誰もが使えるアグリテックへと変換する鍵となる。参画機関の皆さまとともに、全力で取り組んでまいります」とコメントした。
実施体制は、豊橋市が幹事自治体、豊橋信金が幹事機関として参画。さらにJA豊橋や「イノチオアグリ」「トヨタネ」といった地元企業、愛知大学、豊橋創造大学など多数の機関が連携し、産学官金が一体となって社会実装を進める。
支援期間はフェーズ1の2年間で、研究費は年間3700万円。審査を通過すれば、最長で合計7年間のプロジェクトへ移行する可能性がある。豊橋技科大はプロジェクトを始動させ、「人の知」と「先端技術」が融合する活力ある社会(ヴァイブラント社会)の実現を目指すとしている。
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若原昭浩学長のコメント
事業は、高度な技術の開発や新たな技術の体系を創生する学問「技術科学」と産学共創による実践を重視するという本学の使命と一致する。特に、本拠点では、若手研究者である上原PLが専門とする「人間情報学」を核に、熟練者の「人の知」を先端技術に融合させる革新的なアプローチを採用している。大学として、この挑戦的な異分野融合研究へ総力を挙げて支援し、最大限のコミットメントをもって推進していくことを約束します。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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