【連載】若手秘書が見た永田町の現実〈11〉 情報を整理し継続して報告

2026/08/03 00:00(公開)
衆議院第一議員会館(筆者撮影)
衆議院第一議員会館(筆者撮影)

■特別国会会期末の長い夜

 7月24日、特別国会は事実上の最終日を迎えていた。

 その日の朝、議員会館には「夕方ごろには国会も終わるだろう」という、どこか楽観的な空気が流れていた。参議院では「副首都」に関する法案の採決を控えていたものの多少の遅れはあっても、夜までには一連の手続きが終わると多くの関係者が考えていたように思う。

 しかし、その見通しは午前中に崩れ始めた。参議院で法案を審議していた委員会が、採決を行わないまま休憩に入った。再開の時間も、採決が行われるかどうかも分からない。委員会が止まれば、その後に予定されていた本会議も開くことができない。さらに、午後に衆議院で予定されていた高市総理が出席する予算委員会にも影響が及ぶ。一つの委員会が止まったことで、国会全体の日程が動かなくなった。

 私の携帯電話には、国会関係者から次々と情報が届き始めた。「委員会再開の見通しが立たない」「国会の会期をさらに延ばす可能性がある」新しい情報が入るたびに、その後の予定を書き換える。しかし、修正したばかりの予定が、数分後には別の情報によって再び変わる。

 秘書として求められるのは、届いた情報をそのまま議員に伝えることではない。複数の情報を確認し、今の時点で何が確かなのかを整理する。そのうえで議員に報告し、会議や来客、移動などの日程を組み直していく。変更が決まれば、関係者にも連絡を入れなければならない。ところが、その連絡を終えたころには、状況がまた変わっていることもある。通知音が鳴るたびに画面を確認し「今度こそ動くのだろうか」と次の展開を待つ。慌ただしく動きながらも、できることは新しい情報を待つことだけという時間もあった。

 午後になっても、委員会はなかなか動かなかった。一時は、国会の会期をさらに65日間延長する可能性が高いとの情報も入った。その後、委員会は再開されたものの、法案を採決できるかどうかは依然として分からない。予定されていた予算委員会まで行えば、国会が終わるのは翌日の午前1時を過ぎるのではないか。そんな見方も強まっていった。朝には夕方までに終わると思われていた国会が、そもそもこの日で終わるのかさえ分からなくなっていた。

 今回の一日を通じて特に印象に残ったのは「会期延長」という言葉だった。衆議院で可決された法案について参議院が結論を出さない場合、一定の条件を満たせば、衆議院側で改めて採決し、成立させる方法がある。そのため会期を延長し、最終的には衆議院で法案を成立させることも、現実的な選択肢として取り沙汰されていた。

 それでも、与野党は参議院で結論を出すための話し合いを続けた。現在の参議院では、与党だけで法案を成立させるために必要な議席数に届かない。ほかの政党や無所属議員の理解を得なければ、法案を通せない。協議は何度も難航したが、それでも交渉が打ち切られることはなく、各党の間で合意点を探る作業が続けられた。

メディアでは伝わらない一日

 夜になり、ようやく状況が動いた。委員会で法案が採決され、可決された。その後に開かれた参議院本会議では、賛成123票、反対121票。わずか2票差で法案が成立した。朝から何度も遠のいていた国会の閉会が、ようやく見えた瞬間だった。その後、衆議院でも国会を閉じるための手続きが行われた。本会議が終わったのは、午後11時近くだった。

 しかし、本会議が終わると秘書の仕事も同時に終わるわけではない。議員への報告や関係者への連絡、延期された日程の確認などが残っている。朝から何度も書き換えてきた予定を整理し、私たちがようやく一日の終わりを実感したのは、日をまたいだ後だった。

 この日の出来事は「特別国会が閉幕」としてメディアで伝えられることが多いのかもしれない。しかし、秘書として現場にいた私には、それだけではない一日に見えた。衆議院には、選挙で得た多数の議席を背景に、政策を前へ進めていく力がある。一方、参議院は、衆議院とは議員の任期や選挙の時期が異なる。衆議院で決まったことを別の立場からもう一度考え、異なる意見を国会の結論に反映させる役割を担っている。今回も、法案を成立させる別の方法が考えられるなかで、参議院で結論を出すための話し合いが最後まで続けられた。

 もちろん、国会の日程が直前まで決まらないことを、手放しで評価することはできない。予定されていた予算委員会は延期され、国会職員や省庁の職員、秘書など、多くの人の日程にも影響が出た。それでも、異なる立場の議員が最後まで話し合い、自分たちの議場で結論を出そうとしたことは、私の印象に強く残った。

 朝から鳴り続けた携帯電話の通知は、国会が閉じられた後、ようやく落ち着いた。そしてその一日は、参議院が衆議院とは異なる立場から法案に向き合い、自ら結論を出そうとした一日でもあった。ニュースで伝えられた「賛成123、反対121」という数字。私は、その数字に至るまでに重ねられた話し合いと調整を、国会議員秘書として初めて間近で見た。

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奥野蓮

1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)

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