日本損害保険協会の会長に6月30日に就任したのは損害保険ジャパンの石川耕治社長だ。業界全体の刷新に向けて各メディアのインタビューに答えている。当地の取り組みはどうか。損害保険ジャパン愛知東支店に4月に着任した谷俊策支店長に聞いた。
―東三河の印象について伺います。
◆愛知県での勤務は3回目で、20代の頃に岡崎に4年、直近では滋賀支店の前に名古屋に4年おりました。東三河の皆さまはとても堅実かつ着実で、温かく迎え入れていただき感謝しています。教科書にもある通り、日本を代表するモノづくりの場所でありながら、全国トップクラスの農業産出額を誇る本当に豊かな地域です。お付き合いのある東三河の農園さんから大葉を頂いたので、近くの店でシラスを買って合わせて食べたりしましたが、野菜や食材が本当においしい。また、企業さまと向き合う中で、伝統を重んじる地域であると感じる一方、地域一丸となって新しいことに挑戦しようという思いも伝わってきます。
―不祥事からの信頼回復という点も含め、6月に改正保険業法が施行されました。「お客さまの最善の利益の追求」について、愛知東支店ではどのように考えますか。
◆ご迷惑をおかけした点について、深くおわび申し上げます。当時、私たちを助けてくださったのは代理店の皆さまでした。もし当社が直接保険を販売していたら、契約が半減していた可能性もありますが、代理店の皆さまがお客さまをしっかりと支えてくださったことに深く感謝しています。これからは代理店の皆さまと共にお客さまへ最適な内容・タイミングで商品・サービスを提供できるよう、これまでの売り上げ重視の姿勢を改め、代理店の皆さまの業務品質や顧客対応に価値を置いていただく体制へと移行しています。代理店手数料体系を品質重視に改定し、社員と代理店の皆さまとの対話や保険募集人教育を進めています。
具体的には「SOMPO Agent Academy」という育成プログラムを展開しています。AIなどのデジタルツールも活用し、品質の高い保険募集人へと育成していくための研修プログラムです。開講式と修了式があり、経験者も未経験者も参加しており、新入社員の研修カリキュラムに組み込む代理店さまもいます。品質向上には非常に注力しています。
―地元代理店との関わり方についてはいかがでしょうか。
◆業界全体で品質を求めていますが、メーカーとして上から目線で指示するのではなく、代理店の皆さまの課題は保険会社の課題でもあるという姿勢を大切にしています。課題解決に向け「品質を高め合うための伴走型のサポート」を行い、代理店の皆さまの現状や悩みを丁寧に聞き取り、適切なサポートをすることで、お客さまに正しいタイミングで最適な商品が届くような対話を重視しています。これが地域に根を張る私たちの使命です。また、態勢整備は市場で生き残るための最低限の基準に過ぎません。そこから各代理店の皆さまが「事故対応が強い」「防災・減災に関するアドバイスができる」など、それぞれの強みや個性を発揮できるよう、尖った強みを一緒に考えていきたいですね。
―南海トラフ地震の津波想定見直しもあり、豊橋なども大きな影響が懸念されます。日本損害保険協会が地震保険制度60周年を機に再整備を掲げる中、万一の際の保険金支払いの受け皿作りについて教えてください。
◆具体的な体制作りとして「有事の迅速な査定ネットワーク」「平時からの官民連携を通じた防災力向上」の二つの観点があります。有事対応では、広域災害発生に備えて、事前に支社や各現場から災害時の初動対応のためのプロジェクトチームを組成しています。チームメンバーは事前に初動対応研修を行い、災害発生時にすぐさま活動できる体制を整えているため、初動段階からスムーズな顧客対応が可能です。また、保険金請求手続きの迅速化・利便性向上のため、お客さまがスマートフォンからLINEで担当者と直接やり取りして請求できる仕組みも提供しています。
官民連携による地域防災力の向上としては、2019年に豊川市さまと包括連携協定を締結しました。形式的な協定に終わらせず、昨年度は豊川市の「えがおフェス」という体験型の交流イベントにおいて、全社で展開している「防災ジャパンダプロジェクト」のメニューを提供し、「毛布で担架トライアル」などを行いました。また、今年1月の新城市の消防祭にも、同様に「防災ジャパンダプロジェクト」として出展させていただきました。顔が見える会社であることが重要です。今後は代理店の皆さまや地域の企業さまとご一緒させていただきたいと考えています。
―昨今は気候が極端化し、2023年の東三河豪雨など、水害リスクも高まっています。経済的損失と補償の差額を埋めるためのリスク認知や保険の啓発はどのように行われていますか。
◆県内の水害(水災)補償の付帯率は2024年度が64・7%で、全国平均の61・8%と同程度です。地震保険の付帯率は2024年度が77・1%で、全国平均の70・4%を上回っています(出典は損害保険料率算出機構「水災補償付帯率」「グラフで見る!地震保険統計速報」)。しかし、裏を返せば水災補償のない世帯が約35%あるということですので、お住まいの地域のリスクや必要な備えについて、代理店の皆さまと共に正しく伝える必要があります。そこでお客様へ提供しているのが、公的機関のハザードマップと当社の過去の保険金支払いデータを融合したオリジナルのハザードマップ「THEすまいのハザードマップ」です。住所を入力するだけで、過去の事故実績やリスクの高さが表示されます。地震(南海トラフなど)や浸水、台風のリスクが視覚化されています。保険は経済的カバーの一手段ですが、これを見ることで「どのような防災対策を家庭ですべきか」を考えるきっかけになります。液状化、浸水、津波、そして大雨の洪水(水災)リスクなども詳細に確認できます。台風や竜巻などの風災、落雷、さらには積雪、交通事故リスクや、緊急時の避難所の場所まで掲載しています。
また、最近は物価上昇の影響もあり、火災保険の保険金額(建物の評価額)の見直しが必要です。従来通りの保険金額では、万が一の際に家を再建できなくなるリスクがあります。自然災害の増加に伴い保険料が上がるだけでなく、適切な補償額を設定するために保険金額自体も上げる必要があるという二重の負担があり、お客さまへの説明には苦心していますが、万が一の際の生活再建のため、保険金額の適正化を一生懸命お伝えしています。
1974年生まれ。早稲田大学法学部卒。1997年日本火災海上保険(現損害保険ジャパン)入社。2000年愛知東支店営業第二課、15年地区サポート部金融営業推進室課長、19年名古屋企業営業部金融公務室長、23年滋賀支店長。今年4月から現職。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。