前回は、特別国会の会期末に、国会の日程が二転三転した一日について書いた。国会が閉会すると、ニュースで本会議や委員会の様子を見る機会も少なくなる。そのため、「国会議員は次の国会まで休みなのではないか」と思う人もいるかもしれない。しかし、実際にはそうではない。国会議員の仕事は、国会の開会中と閉会中で、その中身が大きく変わる。簡単に言えば、開会中は政策を議論し、決定する時間であり、閉会中は現場の声を集め、次の政策を練る時間になる。
大きく分けて国会には、通常国会、臨時国会、特別国会がある。通常国会は原則として毎年1月に召集され、会期は150日間で延長がなければ6月ごろに閉会する。その後、秋には臨時国会が召集されることが多く、近年はおおむね10月から12月にかけて開かれている。もちろん、政治情勢や選挙によって臨時国会や特別国会が夏に開かれることもあり、毎年同じ日程になるわけではないが、議員がある程度まとまった時間を確保できるのは、通常国会が終わってから秋の臨時国会が始まるまでの主に7月から9月にかけての期間になる。
この時間をどう使うかは、国会議員にとって非常に重要だ。国会開会中は、本会議や委員会への出席に加え、党の会議や立法活動が仕事の中心になる。政権与党である自民党では、午前8時から党本部で部会が開かれることも多い。各省庁が法律案や予算、政策について説明し、それに対して議員が意見を述べる。党内で了承された法律案が国会に提出され、衆参両院の委員会や本会議で審議される。議員が委員会で質問する場合には、課題を整理し、資料や統計を調べ、関係者や担当省庁から話を聞く。質問時間がわずか数分であっても、その準備には何日もかかることがある。政府からどのような答弁を引き出し、制度の改善につなげるのか、議場で交わされる短いやり取りの裏側では、議員と秘書による地道な準備が続く。
国会開会中の議員と秘書は、本会議、委員会、党の会議、来客、議員連盟、取材などの予定に追われる。国会日程は直前に決まることも多く、一つ予定が変われば、その後の日程をすべて組み直さなければならない。開会中の永田町は、議論と決定、そして調整が繰り返される時間である。
一方、国会が閉会すると、多くの議員は地元へ戻る。支援者を訪ねるだけでなく、制度のはざまで困っている人、自治体、企業、医療や福祉の関係者などから、現場の話を聞く。法律や制度は、成立すればそれで終わりではない。実際に支援を必要とする人に届いているのか、申請手続きが複雑すぎないか、国がつくった制度と地域の実情にずれはないかなど、現場を歩くと、法律や省庁の資料を読んでいるだけでは分からない制度の穴や矛盾が見えてくる。
事務所では、寄せられた意見を整理し、どの省庁が担当する課題なのか、現行制度で対応できるのか、新たな予算や法改正が必要なのかを調べ、必要であれば法案の起草や次の国会質問の構想を練る。一人の困りごとに見えたものが、調べてみると全国に共通する制度上の問題だった、ということもある。閉会中に集めた声が、秋の臨時国会や翌年の通常国会での質問、予算要望、法律改正へとつながっていくのだ。
そして閉会中には、もう一つ大切な仕事がある。地元での政治活動と党勢拡大だ。閉会中は地域を歩き、自分の顔と名前を覚えてもらう時間でもある。国会議員は、どれだけ政策を考えても、次の選挙に勝たなければその政策を実現し続けることはできない。地域の会合や行事に出席し、街頭で国政を報告し、支援者を訪ね、人の話を聞くことと、自分の考えを伝えることを繰り返しながら、次の選挙に向けた信頼を積み上げていく。党の政策や自身の考えを伝え、支持を広げていく政治活動であり、党勢拡大の活動でもある。
同時に、地域を歩いて有権者の声を聞くことが、政策の出発点になる。閉会中は、政策をつくる時間であるとともに、次の選挙に勝つために、政治家としての基盤をつくる時間でもある。
また閉会中は、国会議員が海外へ出るための貴重な期間でもある。国会開会中の国会議員の海外渡航は、原則として認められていない。ただし、所属会派の承認を得て議長に請暇を申請し、許可が下りれば渡航することはできる。本会議や委員会がいつ開かれるか分からない中で、長期間日本を離れることは実務的にも難しい。だからこそ、まとまった日程を確保できる閉会中は、海外視察や議員外交に適している。議員の海外視察は遊びではなく、海外の制度や政策、現場の運用を自分の目で確かめ、日本の政策に生かすことが重要だ。
私自身、この夏も議員の海外渡航を担当し、とある国の保育関係施設の視察を調整した。日本とは異なる仕組みの下で、条件によっては24時間保育なども行っている現場などを視察し、帰国した議員からは現場を訪ねたことで多くの学びがあったとの報告を受けた。
視察は、現地を訪れて終わりではない。帰国後に資料を整理し、日本の制度と比較し、取り入れられる仕組みがあるかを検討する。その成果を国会質問や議員立法、政府への提言につなげてこそ、海外へ行く意味がある。
国会が閉じている期間は決して長くない。選挙や臨時国会があれば、その時間はさらに短くなる。地元を歩き、声を聞き、制度の問題を整理し、法案や政策を練り、必要に応じて海外の事例も調査する。そのすべてを限られた期間に進めなければならない。開会中は、集めた声を国会で議論し、制度に変える。閉会中は、、国会議員にとっての休暇ではない。次の国会と、次の選挙に向けて、どこへ行き、誰に会い、何を持ち帰るのか。その時間の使い方が問われる、短くも重要な時間なのである。
購読残数: / 本
1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)