路上生活者の自立支援 髙島さん「隣人となる」出版

2021/06/29 00:02(公開)
「隣人となる」の紙書籍を発刊した髙島さん=東愛知新聞社で
「隣人となる」の紙書籍を発刊した髙島さん=東愛知新聞社で
 路上生活者の自立に向けた協力を続ける「豊橋サマリヤ会」の牧師、髙島史弘さん(51)=豊橋市弥生町=の20年の活動を紹介する著書「隣人となる」が出版された。数多くのホームレスと交流がある髙島さんの信仰の道に入った経緯、福祉活動のきっかけ、新型コロナウイルス禍の今が語られる。
 「ライフストーラー企画」刊でB6判152㌻。税別1000円。インタビューを再構成するスタイルだ。電子書籍版でスタート、紙書籍のオンデマンド版の発刊も始まった。
 岡山県出身。母方では5代続くクリスチャンだ。幼少期の思い出と高校生活、そして刈谷市の日本電装(デンソー)への入社、再びキリスト教に近づいていく様子がつづられている。
 そして豊橋工場勤務と「豊橋ホサナキリスト教会」での信仰生活を経るうち、神にすべてを捧げ、福祉の道に入る願いが強くなっていく。1998年に退職した。
 その時は白紙だったが、進むべき道を決定づけたのは、実家から愛知へ移動する際の出来事だったという。乗っていた電車が人をはねた。振替輸送となり、予定より早く名古屋駅に着いた髙島さんは、構内で寝ていたホームレスの男性に話しかける。「死にたい」とこぼす男性と前夜のことが重なり、聖書の一節を引用しつつ、最寄りの教会にいざなった。
 豊橋で駅前でトラクト(聖書のメッセージをまとめたチラシ)を配っていると3人のホームレスが手伝いに来た。そしてその輪が広がり、2003年に「豊橋サマリヤ会」が発足する。会の名前と本書名前の由来は聖書のエピソード「良きサマリヤ人」から。
 貯金を切り崩しながらの福祉活動だったが、やがてそれも底をつく。だが、祈りと出会いによって支えられ、活動は現在まで続く。
 第5章では、路上生活者の自立協力で取り組まざるを得ない生活保護申請の難しさ、リーマン・ショック不況と豊橋派遣村と相談に訪れる外国人の姿が描かれている。
 コロナ禍で相談者が増えた。特別定額給付金の支給を受けるために、住民票のない人々を支援した。一度家を失うと、もう戻れない人も少なくない。
 髙島さんはホームレス問題に専門的に取り組む公的組織が必要ではないかと考えている。「精神的なものも含めて、包括的にケアをする仕組みが必要ではないか」と話した。
 豊橋駅前広場、午前9時。髙島さんによる説教が始まる。聞き入っているのは10人前後のホームレスを中心とする男女。この日は「ルカによる福音書」をひいた。髙島さんが妻と作った炊き出しの食材が配られ、集会は終わった。「ささやかですが、みんなの一日の糧の一部になれば」。髙島さんの自立協力活動は続く。
 電子版は「アマゾン」から、紙書籍は「ライフストーラー」(https://life-storier.com/)の注文フォームから。
【山田一晶】
豊橋駅前広場での集会
豊橋駅前広場での集会
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