豊橋の写真館などを宿泊施設へ 東三河でホタルヤプロジェクト

2025/09/02 00:00(公開)
ホタルヤ写真館=豊橋市南栄町で

 豊橋市や豊川市でかつて地域に親しまれた店舗や施設を宿泊施設へと生まれ変わらせる試みが動き出した。その名も「ホタルヤプロジェクト」だ。

 

 豊橋市南栄町の豊橋鉄道渥美線の南栄駅近くに、かつて写真館「ホタルヤ」として親しまれた建物がある。今は空き家だ。

 

 プロジェクトの始まりは昨年、インターネットの物件情報サイトに掲載された一枚の写真だった。旧写真館は所有者が亡くなり、相続した家族は遠方に住んでいた。建てられて半世紀以上。現像室やスタジオ、裏庭など昭和レトロな雰囲気が漂う。「このままでは建物の良さが失われてしまう」。そう感じたのは東三河で不動産関連事業を展開するフォレスタの担当者。町内のまちづくり団体「南栄町協議会」の白井紀充さんに問い合わせたのがきっかけだった。

 

 同社はアパートやマンションの賃貸業を営んできたが、入居者との関わりはあっても、地域とのつながりは薄かった。次の挑戦として浮かんだのが「人の役に立ち、まちづくりにつながる事業」。その手段として選んだのが宿泊業だ。民泊よりも広い可能性を持つ旅館業法に基づく宿泊所として営業すれば、利用者数に制限がなく、観光客からビジネス客、さらには地域住民まで多様なニーズに応えることができると考えた。

 

 担当者は所有者との売買条件の交渉に約1カ月を費やした。融資の壁もあった。プレゼンテーション相手の信用金庫にとって初めての事例。初期投資を極力抑え、閑散期のリスクまで織り込んだ収支計画を提示。融資を引き出した。「細かい数字まで落とし込んだこと、南栄から東三河を変えたいという覚悟が伝わったのでは」と担当者は振り返る。 

 

 「南栄町協議会」の存在にも勇気づけられた。エストニアをモデルとしたIT活用のまちづくりに挑む協議会の活動に触れ「本気で地元を変えようとする熱気があった。外から来た自分を仲間として迎え入れてくれる人たちが支えになった」という。

 

 リノベーションの方針も、工夫を凝らす。全面改装はせず、必要な部分だけ手を入れる「メリハリ型」。宿泊施設に不可欠な水回りや床は清潔感を重視して改修しつつ、スタジオや現像室は極力そのまま残す。魅力を生かしながらコストを半減させ、旧写真館ならではの雰囲気を宿泊体験に取り込む。

 

 プロジェクト名の「ホタルヤ」はかつての写真館の屋号にちなんでつけられた。「過去の光を消すのではなく、新しい光を重ねる」という思いも込められている。訪れた人が寝るだけでなく、地域の歴史や文化と触れ合い、新たな体験を得られる空間にする。

 

地域住民らと連携 DIYイベント

 

 開業を前に、団体や地域の人との連携も始まっている。8月中旬にあったDIYイベントには、10人以上が参加。草取りや内装の整備などに取り組んだ。参加者から「手作業で関わるから愛着が湧く」「昔の建物の趣を残した宿泊施設は楽しみ」などの声が寄せられた。今後は、まちの写真を展示するイベントや住民向け説明会を計画中だ。

 

 ターゲットは、2人組や家族、グループ旅行など。ビジネスホテルでは対応しにくい宿泊スタイルにも柔軟に応える。「ホテルでは家族が一緒に泊まれないこともある。ここなら一つ屋根の下に過ごせる」と話す。オープンは10月予定。まずは知人や学生を対象に、課題を洗い出して改善する。「小さく始め、地域とともに育てていきたい」と意気込む。

 

 一足早く豊川の拠点がオープンする。「ホタルヤブランド」として、単なる宿泊施設にとどまらず、地域資源を活用した新しい観光文化を生み出す拠点にする。「豊橋や豊川を目的地に選んでもらえるような街にしたい」と話している。

DIYイベント(提供)
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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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