鼻に残る「煙」がヒントに 火災を糧にした薫製調味料、クラファンで300人超が支援

2025/12/23 00:00(公開)
「煙を追いかけてきた」と語る綿引さん=豊橋市向山町で
「煙を追いかけてきた」と語る綿引さん=豊橋市向山町で

豊橋のピッツェリアネアポリスがクラファンに挑戦中、1月10日まで

 

  豊橋市向山町の本格ピザ専門店「ピッツェリア ネアポリス」店長の綿引裕三郎さん(54)が、薫製調味料「狼煙(のろし)のナポリタンZ」を商品化した。クラウドファンディング(CF)サイト「Makuake(マクアケ)」で先行販売し、開始からわずか数日で目標金額20万円を達成。22日時点で330人から約180万円の支援が寄せられ、大きな反響を呼んでいる。

 

 調味料開発のきっかけは、綿引さんが体験した火災だった。2017年、まき窯の煙突から出火し、店舗の一部が焼失。消防車10台が出動する騒ぎとなった。綿引さんも煙を吸い込んで一時的に声が出なくなり、「もう終わった」と絶望感に襲われた。しかし、ビルオーナーらの「頑張れ」という温かい言葉に支えられ、「一度死んだからには世界一のピザを作る」と心に誓い、再起する。

 

 イタリアとピザへの思いは子どもの頃にさかのぼる。テレビでアルゼンチン出身のディエゴ・マラドーナ選手が所属していた「SSCナポリ」に夢中になり、サッカー雑誌を読みあさった。

 

 運命が動いたのは専門学校時代。豊橋市内でピザ生地を投げたり回したりするオープンキッチン型のピザ屋を目にし、その光景が忘れられなくなった。「ガラス越しに子どもが目を輝かせながら見ていて、ピザ職人に憧れを持った」と振り返る。その後、同店でのアルバイトを経て、都内のピザ屋で数年間修行し、2009年に独立。店名にはイタリアの主要都市「ナポリ」の古名の「ネアポリス」と名付けた。職人として20年近い経験を積み、ピザの来店客からの評判は上々。「世界一のピザを目指すには、次は調味料だ」と考えていた。

 

 ある日、レストランでパスタに唐辛子をかけて食べていた時、火災の影響で鼻に残る煙が「私を使ってみては」と語りかけているように感じた。「煙と唐辛子を掛け合わせれば面白いのでは」とひらめいた。こうして誕生したのが、トウガラシを薫製させた「燻製薬味狼煙」だった。この商品は全国各地から注文が相次ぎ、好評を得た。

 

 第二弾となった今回の「狼煙のナポリタンZ」は、店内で使用していたオイル調味料がベース。常連客から商品化の要望が大きかったため、商品化に踏み切った。製作期間は約4年。何種類もの試作を重ね、細部にまでこだわり抜いた。重厚な香りが特徴のイタリアのキノコ「ヤマドリタケ(ポルチーニ)」でだしを取り、ニンニクを超弱火で約6時間かけて煮込む。さらに3日間熟成させる工程を数回繰り返し、濃厚な味わいに仕上げた。「トマトとチーズに相性が良く、まさしくナポリタンに合うオイル調味料が完成した」と手応えを語る。

 

 綿引さんは、森を育てて、育った木を再び薪として購入する「一本のまきから森林へ」を掲げている。国産の広葉樹を使いピザを焼く。次に、その煙で「狼煙のナポリタンZ」を生み出す。そして、燃え尽きた灰は畑にまかれて土壌改良剤となり、ピザの材料のバジルやオイルの原料のトウガラシの栽培、藍染め商品の色染めに使われる。売り上げの一部は国内の植林団体に寄付される。

 

 CFが始まって約2カ月。応援コメントが多数寄せられ、11月下旬には読売テレビのバラエティー番組でも取り上げられた。綿引さんは「多くの人に支えられていると実感した。人生を懸けて煙を追いかけてたどり着いた一品。ぜひ応援をお願いします」と呼び掛けている。60㍉㍑入り3本セットで5327円。応援購入はCFサイトから。1月10日まで。

専門学校時代の技術を生かし、自らデザインしたボトル
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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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