【豊橋技科大】原子1個分極薄膜でセンサー ウイルスの重さと個数を同時計測

2026/04/28 00:00(公開)
技科大の資料から
技科大の資料から

 豊橋技術科学大学と産業技術総合研究所、東洋大学の合同研究チームは、原子1個分の厚みしかない極薄の膜を使い、ウイルスの「重さ」と「個数」を同時に計測できる新しいバイオセンサーの開発に成功したと発表した。唾液などに含まれる余分なたんぱく質による誤作動を防ぐことができ、将来は家庭で手軽に、かつ専門家並みの精度で感染症を検査できる「次世代の遠隔医療」の実現に道を開く。

 

 今回の研究を主導したのは、豊橋技科大の高橋一浩教授らのチームだ。開発されたセンサーの鍵を握るのは、炭素原子が網目状に並んだ「グラフェン」というナノ材料で、原子1層分の厚みしかなく、究極の薄さと軽さを持つ。研究チームは、半導体製造技術を応用して基板の上にこのグラフェンを橋のように架け渡し、電気を流して微細に振動させた。

 

 従来の検査チップでは、標的とするウイルス以外のたんぱく質などの「夾雑物(きょうざつぶつ、混じり物のこと)」が表面に付着すると、それをウイルスと見誤って反応してしまう課題があった。しかし、今回開発された「マルチモーダル(複数の方式を組み合わせた)」センサは、この弱点を克服した。

 

 まず、膜の振動する速さ(周波数)の変化から、吸着した物質の「総重量」をゼプトグラム(10の21乗分の1㌘)という驚異的な感度で測定する。同時に、膜の振動の揺れ幅や電気抵抗の変化を読み取ることで、吸着した粒子の「個数」も特定する。重さと個数の相関関係を分析すれば、付着したものがウイルスなのか、それともただの汚れである夾雑物なのかを正確に見分けることができるという仕組みだ。

 

 新型コロナウイルスを用いた実験では、汚れが多い環境下でもウイルスのみを特異的に検出することに成功した。その精度は、ウイルスわずか1個分の重さを計測できる「23アトグラム(アトは10の18乗分の1)」という世界最高水準の検出限界を達成している。

 

 このセンサーは数㍉角と非常に小さいうえ、電気信号で動くため装置の小型化や低コスト化が容易だ。将来的には、スマートフォンと連携して自宅で検査結果を確認したり、空気中を漂うウイルスをリアルタイムで監視したりする「IoT(モノのインターネット)センサー」としての活用が期待されている。

 

 研究チームは今後、インフルエンザなど他の感染症や、特定の病気の目印となる物質の検出にも応用を広げる方針だ。高橋教授らは、パンデミックの早期封じ込めや、日常生活の中で健康を見守る基盤技術として社会に貢献したいと考えている。

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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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