間瀬校長に聞く
中高生を中心に大流行のSNS「TikTok」「Instagram」で、県立豊橋商業高校の教諭や生徒の動画が流れ、大きな反響を呼んでいるのをご存じの方も多いのではないか。なぜ公立高校がSNSを発信するのか。新型コロナウイルス禍を経て新たな試みに乗り出した同校の間瀬泰宏校長を取材した。
―豊橋商業高校の校長になられた感想を。
◆生まれ育った街の豊橋商業で現場の教諭として8年働き、いったん岡崎の学校に転勤になりました。いつか故郷で校長になって教育の現場を活性化させたいという思いがより強くなったので、うれしいと同時に重い責任を感じています。
―最近SNSでよく豊橋商業高校を見かけます。新たな取り組みですね
◆はい。実は少し前までは、携帯電話は使用禁止でした。しかし現在は場面によっては使用しています。これは校則が緩くなったのではなく、一つひとつの行動に関して自分で善悪を判断して行動してほしいとの思いからです。その延長線上の新しい取り組みとして、TikTokを使って授業を進めています。
少し詳しく説明しますと、商業科目の「広告と販売促進」という授業で、どうすれば商品やサービスが売れるのか。誰にターゲットを絞るのか、競合の商品と比べての強みは何か、どのような広告を行うべきか、検討して実際に映像を制作して発信していきます。それがうまくいけば世の中から大きな反響を得られるのです。若者の言葉で言う「バズる」ですね。
―一時期は定員割れがあったと聞きましたが、現在は?
◆驚くことに、今年は第1志望率が1・81倍で過去最高(昨年度は1・66倍)となりました。推薦での希望も200人を超えています。背景には、すぐに社会で役に立つ「実学」を教えていることに子どもたちから関心を持ってもらえているのかなと思っています。例えば、勉強として義務感からではなく、好きで見ているSNSを使って、実際に社会で役に立つマーケティングを学ぶことができます。加えて、豊橋商業高校は進学をしたいと考えるようになった生徒も全面的にバックアップしています。難関国公立や名門私立大学にも合格者が出ています。就職に関しても生徒91人に対して求人数は1500人以上。多くの世界的自動車メーカーなどにも就職しています。この選択肢の多さは、人気の大きな背景のひとつだと思っています。
―34年の教員生活を経て思いや今後の商業高校についてどうお考えですか
◆「以信為本」(いしんいほん)。信を以って本と為す。信用第一という意味です。これが、豊橋商業高校の校訓です。社会でビジネスパーソンとして歩を進めるためには、信用が第一です。どんなに時代が変わり、AIが発達していっても信用を土台とする関係がなければ何の役にも立ちません。その信用を土台として、常に自分で判断しながら、行動してほしいです。日常を楽しみながら、目の前の仕事にドキドキワクワクする挑戦を続ける人生を送ってほしいです。その時に大きな武器となる「実学」を学ぶことができるのが豊橋商業だ、そう言われるようになりたいですね。そのためには私も新たな挑戦をドキドキワクワクしながら続けていきます。
【本紙客員編集委員・関健一郎】
学校の一日を紹介する豊橋商業の公式TikTok
校訓「以信為本」の前で