売れ残りなどで野菜が捨てられてしまう食品ロスを防ごうと、豊橋市南島町2の大一青果市場内に仲卸業者の直売店が開店した。正規品の卸値販売や売れ残りの格安販売に、価格に敏感な主婦らの口コミで来店客を増やしている。店主の新井浩二さん(64)は「食べられる野菜は少しでも助けたい」という。
青果卸売「あらいや」(下地町)を営む新井さんが、場内の自社スペースで今月4日から営業を始めた。社長の新井さんが1人で店を切り盛りする。
市内のスーパーで青果販売のテナント店も持つ新井さんは「生鮮食品コーナーは陳列ケースや棚を商品で満たして見栄えをよくする。来店客数しだいで売れ残るリスクもある」と食品ロスの背景を説明する。
また、商品の見た目を過度に気にする消費者心理も影響を与えているとも指摘する。自社直営店でも野菜の傷などは、消費者からのクレーム対象になるという。新井さんによると、これまで取扱品の3~5%は廃棄されてしまったという。
福井県敦賀市の公設市場で仲卸業者が出した店を知り、自身も青果市場への出店を決意。運営元の大一青果に掛け合って賛同を得た。市場内店舗のため出店コストや固定費も抑えられ、格安販売も可能になった。
店頭には正規品を並べる棚のほか、売れ残りや規格外品などを販売する特設「フードロスコーナー」がある。ダンボールに野菜を約10種類詰め込んだものを300円で販売。1日10箱限定のため、開店の午前9時半から1時間足らずで売り切れる日も珍しくない。
キャベツやレタスなどは時間とともに表面の水分が抜けてしまうが、新井さんは「1枚むけば収穫時と変わらないでしょう。傷だって調理すれば味や品質に大きな違いはない」と説く。
隣の自社加工場では選別や袋詰めなどもし、傷物の一部は場内のカレー店にも納める。今後は「営業時間を長くして少しでもロスを抑えたい」と意気込む。
定休日は市場と同じ日曜と水曜、祝日。午前9時半から正午頃まで営業。問い合わせは「あらいや」本社(0532・54・7447)へ。
【加藤広宣】
口コミで訪れた主婦らでにぎわう店頭
傷物の選別などもその場でできる加工場