5月8日に豊橋の汽水域
ジョニー・デップ製作、主演の米映画「MINAMATA-ミナマタ」が8日、豊橋市東小池の文化サロン「汽水域」で上映される。午後1時からと午後6時からの2回。上映後、主人公の写真家ユージン・スミス(1918~78年)の妻、アイリーン・美緒子・スミスさんのアフタートークがある。
「『水俣』を子どもたちに伝えるネットワーク」が主催。豊橋窓口を担当する金子芳美さん(68)=同市嵩山町=によると、1998年8月に市民文化会館で開催した写真展「水俣・豊橋展」の企画段階から、アイリーンさんと交流が始まった。
ユージンの写真に「入浴する智子と母(Tomoko and Mother in the Bath)」がある。胎児性水俣病患者の上村智子さん(1956~77年)を母が風呂に入れている有名なカットだ。しかしこの頃、智子さんの父好男さんの願いで、この写真は「封印」されていた。「もう、智子を休ませてやりたい」と理由を説明したという。
どうしても豊橋で展示したかった金子さんは、ユージンの写真を管理するアイリーンさんの家を訪ね、直談判した。そして上村さんにも連絡を取り、展示の承諾を得た。
豊橋会場では智子さんをはじめとするユージンの写真と、全国各地で写真展を続ける「水俣フォーラム」の写真の計約150点を展示。5日間の会期で6000人以上が訪れた。企画に参加した文化サロン「窓の会」主宰の水谷眞理さんによると、期間中は連日、水俣病に関するコンサートや市の朗読、後援会を併催したという。
その後もアイリーンさんは金子さんらの求めで豊橋で講演したこともある。熊本の上村さんからは、季節の贈り物が届くなど今も交流が続く。
ただ、学校などで水俣病のことを語り続けてきた金子さんは最近、活動をやめている。2020年に熊本県水俣市であった研究会の発表で、上村さんが「智子、ごめんなさい」と述べて涙ぐんだのを見た。「20年以上たって初めて上村さんの気持ちが分かった」と話した。そして「水俣出身だということを隠している人も多くいる。映画を見て、環境問題や平和について気づくきっかけになってほしい」と金子さんは言う。
チケットは1000円で全席前売り。問い合わせは文化サロン汽水域(0532・73・3432)へ。
【山田一晶】
アイリーン・美緒子・スミスさん=写真展「ユージン・スミスとアイリーン・スミスが見たMINAMATA」を伝える熊本県津奈木町のサイトから(昨年9月)