【連載】宮本先生のゼロからわかる金融教室〈3〉 かりる 利息は自己増殖する

2025/02/12 23:00(公開)

 国内旅行の多くは電車や車を使いますが、海外旅行には飛行機が必要です。船旅では何十日もかかる外国旅行でも、飛行機があれば1~2日で行けます。飛行機は旅の夢を実現する強力な手助けですが、その一方で空の旅に時差は付きものです。目的地にあっという間にたどり着く半面、多くの人は一定の期間の時差ぼけに悩まされます。

 

 お金を借りる(借り入れまたは負債と言います)ことも、空の旅と同じです。借り入れによって住宅や自動車をすぐ手に入れられる半面、その後は、借入金の返済が待っています。第1回、第2回で取り上げたお金を「ためる」「ふやす」は時間がかかる方法です。それに対して「かりる」は、空の旅と同様、目的地に瞬時に到着できる、おそらく唯一の方法です。

 

 お金を借りることのメリットとデメリットについて考えてみましょう。メリットは明白です。借りたお金で、すぐに好きなものを手に入れられます。旅の行き先がいろいろあるように、借りたお金の使い道も人それぞれですが、典型的な旅行先(使い道)は決まっています。住宅、自動車、(子どもの)教育、(自分の)奨学金などのライフイベントもあれば、日々の生活資金や趣味のために借り入れをする人もいます。共通するのは、「ためる」「ふやす」よりも早く夢を実現できることです。住宅ローンなしで自宅を買おうとしたら、定年まで働いてやっと家が手に入るのかもしれません。目的地までひとっ飛びの空の旅と同じです。

 

 では、お金を借りるデメリットは何でしょう。飛行機での海外旅行に時差があるように、借り入れには金利が付いてきます。1000万円の借入れをして、金利が年1%だったら借りたお金(元本と言います)に加えて、毎年、金利分の10万円が借りたお金に組み入れられます(利息あるいは利子と言います)。金利が年5%だったら年に50万円の増加です。金利に関して注意しなければならないのは、金利で増えたお金に対して次の年から金利がかかること(複利と言います)です。

 

 たとえば、10万円利息は、金利が年1%だったら翌年には10万1000円になります。50万円の利息は金利が年5%で50万2500円になります。たいしたことがない時差(=金利)と思うかもしれませんが、ボディーブローのように旅の体力を奪っていくと、取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。カードローンで少額の借り入れをしただけなのに、元本や利息の返済をしなかったために負債額が雪だるま式に積み上がってしまったという話はよく聞きます。海外旅行にたとえれば、飛行機で時差ぼけしているところに、無理なスケジュールを組み込んで旅先で寝込んでしまうようなものです。親や親族からの無利息(金利0%)の借り入れを除き、借金には必ず利息が付いてきて、それは自己増殖します。どれくらい自己増殖するかは、金利の水準、金利のタイプ(固定金利、変動金利などがあります)、経済環境によって変わってきます。

 

 借金を悪と考える人もいますが、借り入れ(飛行機)なしで実現できること(旅行できる先)は限られます。自分にとって適切な借り入れをするためにも、第1回で説明したライフプランやマネープランを作っておくことは大事です。航空会社は、パスポートや航空券があれば世界中のどこにでも連れていってくれるように、年収などの条件を満たせば、銀行やカード会社はたくさんのお金を貸してくれます。いつ、いくら借りるか、そしてどのようなタイプの金利を選ぶかは自分で決めなければなりません。借り換えや繰り上げ返済の意思決定もあります。

 

 多くの人にとって人生の夢を実現するために借り入れは欠かせないものですが、自己増殖する利息の性格を見極めて、うまく付き合っていく必要があります。

 

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宮本弘之(みやもと・ひろゆき)

野村総合研究所で32年間、経営コンサルティング業務に従事。主に金融機関の経営コンサルティングを担当、日本人の金融行動や富裕層の研究を立ち上げる。2022年4月から豊橋技術科学大学で経済学及び金融の教育・研究に取り組む。その傍ら、豊橋市内でのアントレプレナーの育成、リスキリング、金融経済教育の各分野の活動にも携わっている。東京工業大学修士(経営工学)、埼玉大学博士(経済学)。豊橋技術科学大学総合教育院教授(22年4月~)、同建築・都市システム学教授兼務(24年4月~)。

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